二重敬語と敬語連結

・「敬語連結」は最後の方に記載してあります。

敬語表現

敬語表現は5つに分類されました。
1.尊敬語
2.謙譲語Ⅰ
3.丁重語(謙譲語Ⅱ)
4.丁寧語
5.美化語

尊敬語

尊敬語については 
多用される
以下の3つの使い方を紹介しました。

(1)尊敬語独自の動詞を使う

 例:田中先生は研究室にいらっしゃいます

(2)「Vになる」の形を使う

 例:田中先生は帰りになりました

(3)「VれるVられる

 例:今日は田中先生が教えられます

(注 : V=動詞 )

謙譲語

謙譲語については
以下の5つを紹介しました。

(1)謙譲語独自の動詞を使う
(2)「おVする」の形を使う
(3)「おVいたします」の形を使う
(4)「ごNする」の形を使う
(5)「ごNいたします」の形を使う

(V=動詞 N=名詞)

二重敬語とは

二重敬語とは
一つの語について
同じ種類の敬語を
二つ以上組み合わせた形のことです。

ざっくりと言えば
●「一つの動詞に
二つ以上の尊敬語の形式を使う」
●「一つの動詞に
二つ以上の謙譲語Ⅰの形式を使う」
ということでしょうか。

具体例を挙げてみます。

(1)尊敬語独自の動詞を使う
(2)「Vになる」の形を使う
この(1)と(2)の形式を使ってみると・・・

召し上がりになる

これは「食べる」という一つの動詞に
尊敬語の(1)と(2)二つの形式を組み合わせた
二重敬語です。
(これは許容された表現です)

具体例2
(1)尊敬語独自の動詞を使う
(2)「Vになる」の形を使う
(3)「VれるVられる」の形を使う

召し上がりなられる

これは「食べる」という一つの動詞に
尊敬語の(1)(2)(3)の
三つの形式を組み合わせた
二重敬語です。

よく使われる二重敬語

尊敬語の場合

上記で述べた
お召し上がりになる」は
よく使われる二重敬語です。
他にも

例1:本日は田中さまがお話しになられます

例2:田中先生がおっしゃられたとおりの結果となりました。

といった二重敬語もよく耳にします。

では、
例1、例2、を分析してみましょう。
尊敬語の形式(1)(2)(3)の
どれを組み合わせているのでしょうか。
みなさんも考えてみてください。

例1:本日は田中様がお話しになられます
分析(元の動詞:話します)

①話します + 形式(2)(「Vになる」)
になる

②お話になる + 形式(3)(「VれるVられる」)
になられる

二重敬語にしないと・・・
→本日は田中様がお話になります

 

例2:田中先生がおっしゃられたとおりの結果となりました。
分析(元の動詞:言う)

①言う + 形式(1)(「尊敬語独自の動詞を使う」)
おっしゃいます

②おっしゃいます + 形式(3)(「VれるVられる」)
おっしゃられます


二重敬語にしないと・・・
→田中先生がおっしゃったとおりの結果となりました。

謙譲語Ⅰの場合

例1:私が田中部長のお宅にお伺いします。
分析(元の動詞:行く)            

①行く + 形式(1) (「謙譲語独自の動詞を使う」)
伺います

②伺います + 形式(2) (「Vする」の形を使う)

伺いします

二重敬語にしないと・・・
→私が田中部長のお宅に伺います

 

例2:私が田中部長のお宅にお伺いいたします。
分析(元の動詞:行く)

①行く + 形式(1) (「謙譲語独自の動詞を使う」)
伺います

②伺います + 形式(3) (「Vいたします」の形を使う)

伺いいたします

二重敬語にしないと・・・
→私が田中部長のお宅に伺います

*この例1、例2の二重敬語の表現は
 すでに許容されています。
 

どうして二重敬語にしてしまうのか

例1:どうぞ、お召し上がりになってください。

すでに一般的に使われている二重敬語です。

では
どうして私たちは二重敬語を
使いたくなってしまうのでしょうか。

それは敬語の使用頻度と関係があります。


例えば日常よく使う「食べる」は
尊敬語独自の動詞「召し上がる」を持っています。

よく使われるので、尊敬語独自の動詞を持ちます。

ところが、皮肉なことに
日常で「召し上がる」を
多用しているため、
「これでは敬意が足りないのではないだろうか・・・」
と、だんだん感じるようになってきます。

洋服なども同じで
どんなに高級な洋服でも
毎日着ていると
結婚式に着ていくには抵抗がありますよね。

日常使いしている敬語は
「敬意」が低減しているため、
ここぞというときには
もっと高めたくなってしまうのです。

結婚式には
やはり、普段は着ていない
素敵なドレスを身に付けたくなるのと同じです。

すでに、
習慣化し、正式な尊敬語として
定着しているものもあります。

・お見えになる
・お越しになる
・おいでになる

やはり
「来る」の尊敬語「いらっしゃる」は
日常頻繁に使っているので
上記のような、
「いらっしゃる」ではない語を使いたくなるのです。
また、

・ご覧になる

も、
すでに立派な尊敬語です。

謙譲語Ⅰの

・お伺いします
・お伺いいたします
・お伺い申し上げます

も、
すでに習慣として定着しています。

二重敬語は間違えか?

●敬語には一つの形式を使えば十分だ。

●必要最低限の敬語でいい。

●二重敬語のように
複数組み合わせて使うのは過剰だ。

こうした二重敬語に対する厳しい意見は
よく聞かれます。
また、こうした意見は
一面的に見れば事実でもあります。

敬語の使いすぎは
好ましいものではありません。

しかしながら、
その場に適した敬語であったなら、
やや敬語が多くなってしまっても、
多めに見てほしいと思います。

それでなくても日本語学習者は
日々いろいろな表現と悪戦苦闘しています。

私自身も晴れの場に出ると
「どうぞ、田中先生の方から
お召し上がりになってください・・・」
などと、思わず口走ってしまいます。


これは二重敬語?

例1:お客様がお待ちになっていらっしゃいます

二重敬語かどうか確かめるために
まず、
「お待ちになっていらっしゃいます」を
敬語をとった素の文にしてみます。

→待っている

これは「待って + いる」
に分解できます。

「待って」を敬語化すると
→「お待ちになって」

「いる」を敬語化すると
→「いらっしゃいます」

となります。

これは
一つの動詞に尊敬語の形を
二つ用いた二重敬語ではありません。

補助動詞を使ってはいますが、
「待って + いる」は
二つの動詞と考えることができるからです。

以下でも述べますが、
これは二重敬語ではなく、
敬語連結と言います。


敬語連結

(例1)
お客様がお待ちになっ て いらっしゃいます

敬語の形にした語を
接続助詞「」でつないだものを
「敬語連結」と言います。

これは二重敬語ではありません。
多少冗長な感がありますが、
基本的には許容されている敬語形式です。
もう一つ例を挙げますね。


(例2)田中先生がご覧になっくださいました

(例2)の文を分析していきます。

まず、
「ご覧になってくださいました」を
敬語をとった素の文にしてみます。

→「くれた

これも「」で、二つの語を連結したものと
考えることができます。
(「見る」+「」+「くれる」)
そこで
一つ目の語「見て」を「ご覧になって」

二つ目の語「くれた」を「くださいました」

に尊敬語化することができます。

つまり
一つの動詞に二つの尊敬語の形を使った
二重敬語ではありません。


ただ、敬語連結を使った文は
「二重敬語だから、間違えだ」
のようによく誤解されます。

誤解されるということは
「敬語連結」の文は
過剰な感覚をまとっているということでしょう。

文法的に許容ではあるけれど、
美しい敬語とは言えないようです。

 

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ではではニゴでした。

 

 

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