語彙の導入方法
語彙の教え方
教え方は星の数ほどあります。
「学習者の数」だけあると言った方が、正確かもしれません。
学習者の個性にあった教え方が、できるといいですね。
そこで、日本語教師は
いろいろな教え方を知っておくと便利です。
レパートリーがいくつもあれば、その学習者にあわせて使えます。
今日は語彙の教え方について考えてみます。
みなさんのレパートリーの中に加えてみてください。
語彙の導入方法
みなさんは、どうやって語彙を導入していますか。
私は授業の中での「語彙」だけの学習時間を、
特別な場合を除いて、つくりません。
なぜなら、語彙だけを導入すると、
その時には語彙の意味は分かるかもしれませんが、記憶には残りません。
長期間ずっと記憶してもらうためには、コツがあります。
*学生が、この語彙「わからない!」と困った時に、導入します。
これは語彙だけではありません。
勉強というのは
学習者が「知りたい!」と思ったときに、導入するのが一番です。
知りたいと思っていない時に、こちらから導入し、説明しても、
なかなか学習者の頭には入りません。
残念ながら、いくら先生に「熱意」があってもです。
*文型や表現の中で導入します
語彙は単独では、話したり、書いたりするときの役に立ちません。
必ず、他の言葉とつながって、一つの文を紡ぎだします。
ですから、文の中で学ばないと、本当の意味での理解は得られません。
語彙の板書方法
*ホワイトボードに語彙のスペースを作りましょう。
例えば、授業の中で、「その言葉の意味が分かりません。」と、
質問を受けたら、スルーは、なかなかできません。
そこで、語彙の授業が始まります。
その時にはホワイトボードの右端か左端に語彙のスペースを作ります。
*毎回ホワイトボードの同じ場所に、語彙を書くスペースをつくりましょう。
ここにスペースを作ります。
注1、漢字にはルビをふる。
注2、名詞、イ形、ナ形、
動詞(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲグループ)
に分けて板書する。
(例)きれいです(ナ)
うつくしいです(イ)
美人(びじん)
食(た)べます(Ⅱ)
そして、休み時間も、それは消しません。
(休み時間に学習者がノートに書き写すための配慮です)
授業の中で、特別な語彙の時間を設けずに語彙を学習するときには
板書が不可欠です。必ず
①学習者が「わかりません。」といった語彙。
②教師が今日はこの語彙を導入しようと考えてきた語彙。
などを、教えるたびに書き残します。
なぜなら、一つの語彙学習の時間は短く、すぐに文や表現に戻ってしまいますから。
それに今日勉強した語彙を書いておくと、復習するときにとても便利です。
語彙の復習方法(その日の授業での)
今日勉強した語彙の中には、
「この語彙は大切だ」「必ず覚えてほしい」というものがあります。
その時には、ホワイトボードに書いてある語彙を指して、
*その日のうちに繰り返し復習します。
あと3分で授業が終わるけれど、何をしよう、といった
空いた時間に、語彙の復習をしましょう。
あるいは、少し集中力が途切れたときに、
ゲーム感覚でホワイトボードの語彙を復習しましょう。
<復習>
教師:リンさん、この言葉の意味は何ですか?(ホワイトボードを指して)
リン :~です。
教師:そうでしたね。
(注)この時自分の言葉で説明していたら、自分で考え出したのですから、
その点をほめましょう。
(注)もし、学生の説明が足りなかったら、
教師:ロンさん、タムさんはさっき、何と説明しましたか?覚えていますか?
ロン:はい。タムさんは「 ~ 」と言いました。
教師:そうでしたね。教師:ソンさん、マリさんは
さっきこの言葉を使って、どんな文をつくりましたか。
ソン:~
このように、ごくごく短い時間で、一日のうちに何度か復習をします。
そうすると、語彙を導入する時にも、
学生:(あっ、また、復習の時に指されるかも)」
と、考えるので、学習者は集中して聞きます。
また、新しい語彙で、クラスメートが作ったいい例文も
復習の時に
教師:リンさんは
この言葉を使って、さっきどんな例文をつくりましたか?
と、問われます。
そこで、学習者は語彙導入の時に、クラスメートが作った例文を
きちんと覚えようとします。
そして、このように、いい例文だと、何度も発表してもらえるので、
はりきって考えます。
(みんなの前で自分の例文を発表してもらえるのは、本当にうれしそうです。
例文を考えるときの真剣さが、ほほえましくなります)
この導入方法の利点
授業の時、語彙導入だけの時間をつくり、勉強すると、
意外と時間をとられてしまいます。
それなのに、効果はいま一つです。
今日述べた語彙導入の方法だと、
語彙導入の時間が、短くなります。
あるいは、同じだけ時間をかけたとしても、
その時間は分散しています。
ですから、集中力が落ちにくく、
何度も時間を空けて繰り返されるので、よく覚えられます。
ぜひ、一度試してみてください。
ではではニゴでした。