敬語を教える前に

前回の続きとして、
授業に入る前に
敬語の重要性について、
もう少し
付け足していきたいと思います。

敬語は相手を尊敬しているから使うのか?

社会生活を送るとき、
自分の個人的な感情、
例えば「好き」とか「嫌い」といった気持ちを
直接相手にぶつけることは
あまり、ほめられたことではありません。

公の場では
そうした気持ちを いったん棚に上げ、
社会人として、相手を尊重することが求められます。

 

「敬語」は
相手を「尊敬」しているから使う、
というものではありません。

社会人として、人間として、
お互いの立場を尊重しあっている、
ことを示すために使われます。

 

「敬語」を使う、ということと、
その人を「尊敬」している、
ということとは別の問題です。
(一致していることが
望ましいとは思いますが・・・)

 

現代では
「敬語」は社会的ルールとして
使うことが求められています。

 

同じ社会人として、人間として、
尊重しあい、認め合う、
という気持ちが
「敬語」の根底にあるといえます。


敬語を教える時の注意点

「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」という言葉の問題点

敬語を学ぶとき
「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」
という言葉を使います。

上記でも述べたように
「尊敬語」は
言葉から推測して
尊敬している人に使う言葉なんだろう、
と誤解されます。

「謙譲語」「丁寧語」は
言葉が難しいため、英語に逃げて、

「謙譲語」は「humble   form」です。
「丁寧語」は「polite」です。

と言ったりしてしまうことがあります。

このように
「humble 」や「polite」といった言葉の
表面上の意味のみを伝えると、

「謙譲語は自分を低くする言葉なんだ」と
思い違いをし、
「自分はそんな言葉は使いたくない」
という人が出てきます。

こうした言葉は
誤解を与えないよう、教える時には
十分伝え方に注意しましょう。

そして、
「敬語」というのは
「相手や、その場に対する配慮である」
ということを
きちんと理解してもらいましょう。


相手側を高くしたり、
自分側を高く表さなかったり、
というのは
単なる「システム」です。


「敬語」は
社会生活を送るうえでの
ルールだとも考えられます。

実際に
「自分を低くする」
ことではないと伝えましょう。


敬語学習の出発点で
形式上使っているだけの用語
~「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」~

この用語の意味の誤解から
「敬語」についての
ボタンを掛け違えてしまうと、
学習者は
常にマイナスのベールで
自身を覆っている状態になってしまいます。

等身大の自分を
言葉使いのせいで
理解してもらえない可能性が
大きくなってしまいます。

用語を教える時の
教師の責任は重いといえます。

敬語を使うことのメリット

「敬語」は
自分を低めるものではなく、
反対に、
「敬語」を使うことによって、
自分が礼儀正しい人間であることを
アピールできます。

「敬語」は
「相手を尊重している」
ということを
示すものだからです。

また、
「敬語」を使うことによって、
「この場の状況は改まっている」
との認識を自分は持っている、
ということも示せます。

つまり、
「敬語」が常識や教養がある、
という証左となるのです。

 

敬語を教える時のポイント

※「尊敬語」「謙譲語」といった名称は
表面上の訳のまま理解されてしまうと、
誤解を生む可能性がある、
ということを頭に入れておきましょう。

 

※「敬語」とは
「状況」や「場面」に応じて使われる
社会的規範である、
ということを理解してもらいましょう。

 

※「敬語」を使うことによって
自分のいい面を示しやすくなる、
ということを伝えましょう。


敬語の力

相手に対して、
表面的に敬語を使うことは
簡単です。

しかし、
それでは本当に「敬語」を使えている、
とは言えません。


敬語の力を借りれば
相手に対して言いにくいことでも、
言うことができるようになります。


つまり
「敬語」とは
相手に配慮しながら、
自分の言いたいことを
きちんと伝えることのできる
‘高度な技’とも言えます。


例えば
「失礼にならないように
相手の誘いを断る」

「相手が気持ちよく承諾してくれるように
お願いする」などなど・・・

 

「敬語」を用いれば
自分の希望が通る確率を
ぐっと上げることができます。

 

日本語はNOと言わないのか?

日本語は
「NOと はっきり言わない」
と言われたりもします。

しかし、
「NOと言わないことが大切だ。
それが丁寧さを表しているのだから」
などと誤解されたら、大問題です。

その誤解から、以前
「みんなでカラオケに行こうという誘いを
その場では断らなかったのに、
実際には来なかった」
ということが起こりました。

こうしたことは
日本では大変に失礼な行為となります。
「不誠実だ」とのそしりを免れません。

日本語の「敬語表現」は
「NO」と言わないのではなく、
「単刀直入な断りの言葉を使わない」
ということです。

直接的な言葉を使わずに、
相手に配慮しつつ、
きちんと断る、
ということです。


授業の中では
「NO」と言わないのではなく、
「敬語」を使って
どのくらい上手に「NO」と言えるのか、
の練習をしたいですね。

敬語授業とその目標

「敬語」は
社会生活と深く結びついています。

こうしたことから、
授業は
できるだけ、
実践に近い形で進めたいと思います。

例えば
「自己紹介」

授業初日で行う学習項目です。

しかし、
「自己紹介」といっても
様々なパターンがあります。

格式ばった会場で、
大勢を前にして行うこともあるでしょう。

あるいは
司会者として、
一人一人を他の参加者に
紹介していく、
と言ったことも考えられます。

同じ自己紹介でも

どういう「相手に」対して行うのか、
どういう「場、状況」で行うのか、

こういったことで
言い方が変わってきます。

「敬語表現」とは
つまるところ、
「相手」「場、状況」を見て、
その場にふさわしい言葉を選択し、
使い分けることだとも言えます。

そこで、
授業でその判断力を磨く
という視点も大切になってきます。


文法的に正しい言葉だけの「敬語」学習
では片手落ちです。

また、
先の自己紹介では
立ち方やお辞儀のし方、視線の合わせ方、
などといった態度に関することも
言葉と合わせて学んでいきます。

 

敬語学習の目標とは

正しい言い回しを学ぶ
というものではありません。

その時の
「相手」「場、状況」を判断し、
それに合わせた使い分けが
できるようになる
ということです。

そして、
それは言葉だけではなく、
言葉に付随した態度も含まれます。


一文だけを教える授業法では、
学習者は
役立つ敬語を身に付けられません。

その敬語表現を使う
大きな流れ(文脈)が必要です。


文脈から
「相手」や「場、状況」
そして
「誰が」「誰に対して」
「それは何のためにそうしているのか」

を適切に判断する、
という点に
重点を置きましょう。

補足:非言語コミュニケーションの重要性

言葉だけ丁寧であったとしても、
非言語面で配慮を欠いていると、
誤解や摩擦は避けられません。

文化の異なる者同士のコミュニケーションでは
特に注意が必要です。

言語の形式だけを教えていては
よりよいコミュニケーションを
とれるようにはなれません。

「敬語」の学習時には
特に以下の点にも留意して
授業をしていきましょう。

非言語の伝達手段の分類

1)身体動作

顔の表情、身振り、手ぶり、姿勢など。
2)視線接触

視線の合わせ方、注視時間など。
3)近接空間

相手との距離の取り方、座席の取り方など。
4)時間概念

待ち合わせのために準備する時間、
仕事の準備にかける時間など。
5)体物表現

外見、服装など。
6)パラ言語

言い方の調子、声の出し方、間の取り方など。

パラ言語【palalanguage】の解説
大きい声で元気よく「おはようございます」と
教室に入ってきたAさん。

蚊の鳴くような声で「おはようございます」と
入ってきたBさん。

文字としては同じ
「おはようございます」ですが、
教師としての受け取り方は
全く異なります。

このように、
言語(の意味そのもの)以外の
音声による情報を
パラ言語といいます。

イントネーション、リズム、
(音)声の高低、強弱などのことです。

 

大分長くなってしまいました。
今回はここまでにしますね。

 

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ではではニゴでした。



 

 

 

 

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