敬 語(謙譲語Ⅰ)
尊敬語とは?
敬語の中の尊敬語とは
尊重したい人の行為を尊敬語の形にし、
その方に対する敬意を表しました。
(例)山田先生が研究室にいらっしゃいました。
*尊敬語について詳しく知りたい方は
こちらをご覧ください。
↓↓↓
尊敬語
どうして謙譲語Ⅰが必要なのか?
(例)私が山田先生に言いました。
では、上記の(例)を見てください。
この例文を使って
山田先生に敬意を表したいと思います。
尊敬語は
「尊重したい人の行為を尊敬語の形にする」
という表現形式でした。
ところが、
この例文には
尊重したい山田先生の行為が含まれていません。
「言う」という行為をするのは私です。
敬語の中の「謙譲語Ⅰ」は
こういう場合に使われます。
つまり、
「謙譲語Ⅰ」とは
自分の行為を謙譲語の形に変えて
(尊重したい)山田先生に敬意を表すのです。
私が山田先生に言いました。
↓
私が山田先生に申し上げました。
ポイント
謙譲語Ⅰとは
自分の行為を謙譲語の形にして
相手(山田先生)に敬意を表す形式。
では、さらに謙譲語Ⅰを詳しく見ていきましょう。
謙譲語Ⅰ
上司:川口さん、これ 持ってくれますか?
川口:はい。お持ちします。
川口さんは
上司に
「(荷物を)持ってください。」
と言われたので、
「お持ちします。」
と答えました。
川口さんは
とても控えめな態度で、
謙遜した話し方をしています。
この川口さんの答え方を
「謙譲語」と言います。
謙譲語とは
話し手(=謙譲語を話す人=川口さん)が
文の主体となります。
そして
その文の主体(=川口さん)が
自分の行為を謙譲語の形にして
相手(上司)に敬意を表しています。
謙譲語とは必ず
(謙譲語を話す人である)話し手がその相手と
かかわりを持つ必要があります。
つまり
上司:川口さん、これ 持ってくれますか?
川口:はい。お持ちします。
この例では
川口さん(=話し手)の
行為(=上司の荷物を持つ)は
相手(=上司)の荷物を持つわけですから、
話し手が相手とかかわりを持っています。
謙譲語とは
自分が相手に行う態度を
控えめにして、相手を立てる表現です。
動作の主体(自分)が
相手に対して、
謙遜した態度をとることによって
相手に敬意を表します。
謙譲語Ⅰの形
謙譲語Ⅰの形式はたくさんありますが、
主に次の5つを用います。
(1)謙譲語独自の動詞を使う
(2)「おVする」の形を使う
(3)「おVいたします」の形を使う
(4)「ごNする」の形を使う
(5)「ごNいたします」の形を使う
(V=動詞 N=名詞)
(1)謙譲語独自の動詞を使う
(例)私は先週の日曜、上司のお宅に伺いました。
辞書形 | 謙譲語 | |
普通形 | 丁寧形 | |
訪ねる・聞く | 伺う | 伺います |
食べる・飲む・もらう | いただく | いただきます |
言う | 申し上げる | 申し上げます |
会う | お目にかかる | お目にかかります |
知る | 存じ上げる | 存じ上げます |
見せる | お目にかける | お目にかけます |
ご覧に入れる | ご覧に入れます | |
聞かせる | お耳に入れる | お耳に入れます |
*見る | 拝見する | 拝見します |
*「見る」→「拝見する」のように
「拝」という語を使った謙譲語群があります。
読む | 拝読する | 拝読します |
聞く | 拝聴する | 拝聴します |
借りる | 拝借する | 拝借します |
察する | 拝察する | 拝察します |
(2)「おVする」の形を使う
(例)(フロント係:)お客様、すぐにタクシーをお呼びします。
↑
呼び(ます)
(3)「おVいたします」の形を使う
(例)順番になりましたら、お呼びいたしますので、
↑
呼び(ます)
もうしばらくお待ちください。
*「いたします」は「いたす」の形では使えません。
(4)「ごNする」の形を使う
(例)係の者がご案内します。
(注)漢語動作名詞の中には「お」をとるものもあります。
(例)それに関しましては、のちほどお電話します。
(5)「ごNいたします」の形を使う
(例)その件につきましては、のちほどご連絡いたします。
*「いたします」は「いたす」の形では使えません。
(3)「おVいたします」(5)「ごNいたします」
に関する注意点
(3)「おVいたします」
(5)「ごNいたします」
上記(3)と(5)の謙譲語の動詞
「いたします」は
普通体「いたす」の形では
用いることができません。
(例)〇私が先生の荷物をお持ちいたします。
(例)✖私が先生の荷物をお持ちいたす。
「いたす」は使うときには、常に
丁寧体の「いたします」
にしなければなりません。
「丁寧体」は
聞き手やその場の状況に対して
配慮が必要な時に用いられます。
「お/ご~いたします」が常に
丁寧体で用いられるということは
この形式が
聞き手やその場の状況に対して
配慮していることを示すための形式
だとも言えます。
この点から
「お・ご~いたします」は
「謙譲語の機能」とともに
「丁重語の機能」も
あわせもっていると考えられます。
(2)「おVする」(3)「おVいたします」
に関する注意点
(2)「おVする」(3)「おVいたします」は
一音節の語
「いる」「行く」「見る」「寝る」「出る」
などには使うことができません。
この中の動詞、「行く」と「見る」には
謙譲語独自の動詞があります。
「行く」→「伺う」
「見る」→「拝見する」
謙譲語は必ず
話し手が相手とのかかわりを必要とします。
謙譲語独自の動詞を持たない
「いる」「着る」「寝る」「出る」
といった動詞は、
話し手の行為が相手とかかわる、
ということが考えにくく、
普通は
謙譲語の形を必要としていません。
ただし、
「~させていただきます」
のような形を使うと、
相手とかかわりが持てるので、
使うことができるようになります。
(例)僭越ながら、私から着させていただきます。
謙譲語Ⅰの間違えやすい例
その1
謙譲語Ⅰは必ず
話し手が相手とかかわりを持ち、
その相手に対して、
敬意を表す表現です。
そこで、
相手が存在しない場合には
謙譲語Ⅰを用いることはできません。
(例1)✖きのう図書館に伺った。
(例2)〇昨日 教授の研究室に伺った。
↑
(教授に対して敬意を表している)
(例3)✖きのう画集を拝見した。
(例4)〇昨日山田先生の画集を拝見した。
↑
(山田先生に対して敬意を表している)
その2
(2)「おVする」(4)「ごNする」の形は
「おVできる」 「ごNできる」
のように
可能形(可能否定形)にすることができます。
(例)この件につきましては
私の方からご返答します。
(例)この件につきましては
私の方からはご返答できません。
ここで問題です。
耳にすることも多い以下の例は
適切だといえるでしょうか。
(例1)この電車は(回送となりますので)
ご乗車できません。
(例2)このATMは(夜の9時以降)
ご利用できません。
(例1)で
電車に乗るのは誰でしょうか。
お客様です。
(つまり、
電車に乗る行為をする
主体はお客様となります)
(例2)で
ATMを利用するのは誰でしょうか。
やはり、お客様です。
この例文1は
話し手(JRの人)が
話題の人(お客さま=主体)に対して
話している文です。
尊敬語は
話し手が
話題の人(行為の主体)に対して
敬意を表す表現でした。
そこで、この例文は
尊敬語の形にすることで
適切な文となります。
(例1’)この電車は(回送となりますので)
(お客様は)ご乗車になれません。
(例2’)このATMは(夜の9時以降)
(お客様は)ご利用になれません。
名詞の謙譲語
謙譲語は
話し手が相手に対して
控えめな態度をとる表現です。
そこで、
名詞でも
それが相手とかかわっているものなら、
謙譲語にすることができます。
接頭辞「お」「ご」
をつけて謙譲語にします。
(例1)お客様へのお礼状を
心を込めて書きました。
(例2)お客様へのご説明を
十分に行ってください。
*「お」は和語系の語に
「ご」は漢語系の語につきます。
が、
例外も多く見受けられます。
名詞の「謙譲語・尊敬語」の形
名詞の「謙譲語」と「尊敬語」は形が同じです。
それでは
以下の例の名詞は
謙譲語でしょうか。尊敬語でしょうか。
(例1)(あなたから私への)お手紙
(例2)(私からあなたへの)お手紙
このように形は同じ「お手紙」でも
誰が、誰に(誰のために)の関係で
一方は「尊敬語」になり
一方は「謙譲語」となります。
(例1)は例えば
「あなた」を「先生」と考えると簡単です。
先生から頂いた「お手紙」は
「尊敬語」となり、
自分が「先生」へ送る「お手紙」は
「謙譲語」となります。
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