授受動詞を使った敬語表現(1)くださる
授受表現と授受動詞
授受動詞とは
「くれる」「くださる」
「やる」「あげる」「さしあげる」
「もらう」「いただく」
の7語を指しています。
授受表現(やりもらい)とは
これらの授受動詞を使って、
もの(や行為)のやりとりをする
様々な言い方のことです。
授受動詞を使うと
恩恵的意味を表すことができます。
これから
授受動詞の敬語
「くださる」と「いただく」
を使った表現について
見ていきます。
両者のうち、
このぺージでは「くださる」の方を
説明していきます。
まずは
敬語表現の復習から。
敬語表現の5分類
敬語表現は
大きく5つに分けられます。
(1)尊敬語
(2)謙譲語Ⅰ
(3)丁重語(=謙譲語Ⅱ)
(4)丁寧語
(5)美化語
この中で授受表現と結びつくのが、
(1)尊敬語 と
(2)謙譲語Ⅰ です。
●「くださる」
は尊敬語の表現に、
●「いただく」
は謙譲語Ⅰの表現に使います。
では
(1)尊敬語
の復習から始めましょう。
(1)尊敬語
自分には敬意を表したい
A先生がいます。
尊敬語を使って
A先生に敬意を表すには
A先生がする動作を
敬語(尊敬語)の形式に変えます。
例えば
<普通の文> |
●A先生が帰りました。
↑
A先生の動作
<A先生に敬意を表す文> |
●A先生がお帰りになりました。
↑
A先生の動作を敬語(尊敬語)形式に変換。
これでA先生に
敬意を表していることになります。
次に授受動詞を使った
尊敬語を見ていきましょう。
授受動詞を使った敬語表現(尊敬語)
まず、授受動詞の敬語(尊敬語)
「くださる」について考えます。
「くださる」の意味(1)(2)(3)
「くださる」は
以下の3つの意味を持ちます。
(1)「くれる」という意味。
(2)「誰がくれる」の
「誰が」に対して
敬意を表しているという意味。
(3)上記(2)の「誰が」が(私に)
恩恵を与えるという意味。
上記(2)の点から
「くださる」は
敬語表現の尊敬語に用いる
動詞だということがわかります。
具体的に述べると、
●A先生がこの本をくれました。
「誰が」にあたるA先生に
敬意を表します。
そこで、
「誰が」にあたるA先生の行為を
敬語(尊敬語)の形式に変換します。
●A先生がこの本をくださいました。
以上のことから
授受動詞を使った尊敬語は
・「誰が」にあたるA先生に敬意を表し、
それに加えて、
・その「誰が」(A先生)が私に恩恵をくださる、
という意味を表します。
もう少し例文を上げます。
●わからないところを
先生が説明してくださいました。
●先生が志望大学への推薦状を
お書きくださいました。
次に授受動詞「くださる」を
使った尊敬語の
形の方を見ていきましょう。
授受動詞を使った尊敬語の形
授受動詞「くださる」を
使った尊敬語の形は
3つあります。
(1)動詞て形 + くださる
(2)お + 和語動詞連用形 + くださる
(3)ご + 漢語動作名詞 + くださる
(1)の「~てくださる」の形式よりも
(2)と(3)の「お/ご~くださる」の方が
敬意の度合いが高くなります。
●(1)動詞て形 + くださるの例:
先生が日本文化について話してくださいました。
●(2)お + 和語動詞連用形 + くださるの例:
先生が日本文化についてお話しくださいました。
(2)「お+和語動詞連用形+くださる」の注意点
(2)「お+和語動詞連用形+くださる」は
「いる」「する」「来る」
「見る」「着る」「寝る」「出る」
などのような、連用形が一音節
(例「し(ます)」)
の動詞には用いることができません。
そこで、
(1)の「動詞+てくださる」の形を使います。
●田中さんが私の作った衣装を着てくださいました。
(お着くださいました)
●佐藤さんが仮装パーティーに出てくださいました。
(お出くださいました)
次に
授受動詞ではない動詞を使った尊敬語表現と
授受動詞を使った尊敬語表現を
比べてみます。
通常動詞の尊敬語表現と
授受動詞の尊敬語表現との意味の違い
通常動詞を使った尊敬語
(1)「お話になる」と
授受動詞を使った尊敬語
(2)「話してくださる」「お話くださる」
この両者の違いを見てみましょう。
●(1)の例:
鈴木さんがプロジェクトの経緯をお話になりました。
●(2)の例:
鈴木さんがプロジェクトの経緯を話してくださいました。
(お話くださいました)
まず、(1)と(2)の例文は
両方とも
話す行為をしている鈴木さんに
敬意を払っています。
<両者の違い>
通常動詞「話す」
のみを使った例文(1):
「鈴木さんがプロジェクトの経緯を
お話になりました。」
この文は
「話す」という行為を客観的に述べており、
「話す」以外の意味を含みません。
通常動詞「話す」と
授受動詞「くださる」
を使った例文(2):
「鈴木さんがプロジェクトの経緯を
話してくださいました。」
(お話くださいました)
この文は
①「話す」という客観的意味
に加え、
②「話す」行為をしている鈴木さんが
私に恩恵を与えてくれている、
という意味も付け足されています。
では
通常動詞「話す」を使った尊敬語と
通常動詞に授受動詞の尊敬語「くださる」
を足した文は
どのように使い分けたらいいのでしょうか。
日本人なら直感的にわかりますが、
日本語学習者にとって
これは
とても分かりづらい問題です。
通常動詞の尊敬語と授受動詞尊敬語
両者の使い分け
●通常動詞「話す」を使った尊敬語の例:
(1)鈴木さんが
プロジェクトの経緯をお話になりました。
●通常動詞「話す」に
授受動詞の尊敬語「くださる」
を足した例:
(2)鈴木さんが
プロジェクトの経緯を
話してくださいました。
(お話くださいました)
<両者の使い分け>
使い分けのポイントは
話す人の気持ちです。
話者が
どういった気持ちなのか
そして、
その気持ちを
どのように他の人に伝えたいのか
それによって、使い分けます。
その場の情景を
客観的に伝えたいときには(1)を
その場の情景を自分事とし、
そのことに対し
自分は感謝している
という気持ちを伝えたいときには
(2)の文を使います。
敬語の学習は
「形式」だけでは
決して使えるようになりません。
授業では
具体的な場面、人物設定などが
とても重要になります。
そして、
その話し手がどんな気持ちなのか、
授受表現の入った敬語は
こうしたことが
特に大切となります。
日本語学習者にとって、
授受動詞を使った敬語表現は
難しく感じる、ということを
頭に入れておきましょう。
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ではではニゴでした。