指示詞「こ・そ・あ・ど」文脈指示

前回は、指すものがその場所(現場)にある、
(1)現場指示についてみてきました。

ここでは、指す対象が目の前にはない
(2)文脈指示について考えます。

(2)文脈指示は、会話中の指示詞(1)と文章中の指示詞(2)に分けます。
(1)会話の中では、話し手と聞き手が存在します。

(2)文章の中では、書き手(話し手)は存在しますが、
聞き手はその場所にはいません。

(1)現場指示 (1)領域対立型
(2)領域共有型
(2)文脈指示 (1)会話時(聞き手が目の前にいる)
(2)文章中(聞き手は目の前にいない)

文脈指示(1)会話時

●文脈指示は、まだ理論的に体系化されていません。
ここでは、おおよそのことについて説明します。

●日本語では 情報や知識が、
話し手に所属するのか、
聞き手に所属するのか、それとも
お互いに共有しているのか、
によって、指示詞が変わってきます。

●文脈指示の(1)会話文は
ほぼ現場指示の対立型と同じだと言えます。

文脈指示(1)会話 「あ」の用法

●話し手と聞き手が知識を共有している場合は
「あ」を使います。
A:ねえ、ランチ、また、あそこのお店に行かない?
B:いいよ。今日もあれ食べようかなあ。

●「あ」は、話し手の頭の中のイメージを指し示すことが基本です。

●話し手と聞き手が共有している情報なので、
むかしのことを回想する場合の「あ」が使われます。

A:あのころは 毎日が楽しかったなあ。
B:ほんと。ランドセルをその辺において、日が暮れるまで遊んだね。

 

●独り言の場合も、「あ」が使われます。
あのレストラン、よかったなあ。

●会話時に、言いたいものの名前を忘れてしまったときにも、
「あ」が使われます。
A:えーっと、あれ、なんだっけ?あれは何て名前だったかなあ。あのロボット。
B:アシモのことですか。

●言いにくいものの名前も「あ」で、代用します。
A:すみません、部長、先日お話しした、あの件のことなんですが・・・。
B:ああ、あれね。もうちょっと待っててくれる。

文脈指示(1)会話 「こ」「そ」

●現場指示の「こ」「そ」と、同じように考えても大丈夫です。

●話し手のみが、情報を知っている場合
話し手は自分の情報を「こ」で表します。

A:ねえ、相談に乗ってくれる?
B:いいよ。
A:でも、この話は、誰にも言わないでね。

●聞き手は、話し手の情報を知らないので、
「そ」を使います。

A:昨日、浅草の三社祭でドローンを見たんですよ。
B:えー。それ、本当?
A:本当だって。この目で見たんだから。

●知っている情報とは、見たことがあるかどうかが、
問題となります。聞いたことがあるだけでは、
「そ」を使います。

A:先生のクラスに、陳さんと言う学生がいますよね。
B:はい。
A:その学生さんを、ちょっと紹介してもらいたいのですが。
B:ええ、いいですよ。

●仮定の話は「そ」を使います。
A:ツチノコって、本当にいるらしいですよ。
B:そんな話、信じてはいけませんよ。

文脈指示(1)会話 「こ」「そ」の違い

●「こ」は話題について、
話し手が「自分が提供した情報である」
話し手が「その話は自分にとって大切である」
話し手が「それは自分のものである」と感じたときに使います。

A:きのう、浅草4丁目で、大火事があったんですよ。
B:えー!それ注1)って、本当ですか。
A:ええ。けが人も出たようです。
B:これ注2)は大変だ。4丁目には、妹が住んでいるんです。

注1:話し手は、聞き手の情報を受けているので「そ」を使っています。
注2:「そ」を使うところですが、話し手がこの話題を、
自分のものとして感じているため、「こ」を使っています。

●「そ」は、「こ」に比べ、客観的な述べ方です。
「そ」は話題について、
話し手が「その話題から距離を置きたい」
話し手が「その話題を中立的に述べたい」と感じたときに使います。

A:私の知り合いに林というものがいます。
B:はあ。
A:その(注1)人が言ってたんですが・・・
B:えっ、その(注2)人が、何を言ってたんですか。

注1:話題を客観的に述べたいために「そ」を使っています。
注2:話し手は、聞き手の情報を受けているので「そ」を使っています。

●指示詞「こそあど」の現場指示をご覧になりたい方は
コチラをクリックしてください。
>>指示詞「こ・そ・あ・ど」現場指示

ではでは ニゴでした。

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