敬語(~させていただきます)
この表現は
最近とみに耳にします。
しかしながら、
「使いすぎだ」と言われる
敬語表現の筆頭です。
「使いすぎだ」というのは
「使う必要のないところで、
多用されている」という意味でしょう。
ここでは、この
「~させていただきます」
という敬語表現について
考えてみます。
「~させていただきます」の使い方
使う必要のないところでも多用される
「~させていただきます」
では
どんな場面なら
この表現の使い方として
ふさわしいのかを見ていきます。
まず、
「~させていただきます」
から敬語形式を取り去り、
素の文にします。
→「~させてもらいます」
これは
「させ(て) + もらいます」
となり、
使役「させ(て)」 + 恩恵動詞「もらいます」
の組み合わせです。
使役:「(さ)せる」
「使役」があるということは
「許可」を求める意があるということです。
具体例を挙げると
A:トイレを借りてもいいですか?
B:どうぞ。
A:じゃ、ちょっと使わせてもらいます。
AさんはBさんからトイレの
使用「許可」をもらっています。
恩恵動詞:「もらいます」
「もらいます」は
恩恵動詞です。例えば
A:友達からおみやげをもらいました。
のように使います。
恩恵動詞「もらいます」には
恩恵という名前の通り、
感謝の気持ちが含まれています。
また、
恩恵動詞「もらいます」は
独自の謙譲語動詞
「いただきます」を持ちます。
この「謙譲語」というのは、
自分が敬意を抱いている人に、
何かしてあげたい
と思った時に使います。
つまり、
自分が相手にしてあげたい行為を
謙譲語にし、
その相手に敬意を表すのです。
具体例を示します。
A:先生、重そうですね。
(私が)お荷物をお持ちしましょう。
B:ありがとう。じゃ、お願いします。
では、
今までの分析をもとに
「~させていただきます」
について考えていきます。
「~させていただきます」
「~させていただきます」
の形を分解すると
~させ(て)+ いただきます
↑ ↑
「使役(許可)」 「恩恵動詞(もらいます)」
の謙譲語化
となります。
次に
今までの分解結果からわかった
この表現に含まれている
条件を見ていきます。
この表現には以下の
三つの要素が含まれます。
(1)「自分」の行為であること
(謙譲語Ⅰから)
(2)敬意を示している人物から
「許可」をもらって行う動作であること
(使役から)
(3)そこに感謝の気持ちがあること
(恩恵動詞から)
「~させていただきます」
は、この三つの要素が
そろったときに使うと
適切な表現となります。
例えば
A:先生、
この資料コピーさせていただけますか?
B:いいですよ。
→「(私は資料を)
コピーさせていただきました」
この文は3つの条件がそろっています。
(1)コピーする(自分の行為)
(2)先生からコピーの許可をもらう
(3)そこに感謝の気持ちがある
そこで、適切な文となります。
では、巷でよく見かける
次の表現はどうでしょうか。
本日は休業させていただきます
これは休業しているお店で
よく見かける張り紙の文です。
この「~させていただきます」
が適切な表現なのか、
検証してみましょう。
まず、
三つの条件がそろっているか
見ていきます。
(1)休業する(お店自身の行為)〇
(2)?誰から許可をもらうのか?
(3)感謝の気持ちがある〇
この表現が
ちょっと気になるのは
(2)の要素です。
「店を休業する」ということは
「客側から許可をもらってする」
ということではないですよね。
そこで、不適切な文となります。
ここは
「本日は休業します」や
「本日は休業いたします」
の方が、より自然な文となります。
ところが、
平成8年度に文化庁が
お店の張り紙
「本日は休業させていただきます」
の言い方が気になるかどうかの
調査を行いました。
結果は
気になる・・・ 7.1%
気にならない・・・91.6%
上記の結果を見ると
この表現は
すでに定着したのかもしれません。
「本日は休業させていただきます」
これは不適切な表現ではなく、
単に店側がへりくだった表現をしている、
といった感覚に現代では
なっているようです。
では、
次の表現はどうでしょうか。
本日、田中は
お休みさせていただいております
例えば
会社の外から電話があったとき
A:本日、田中は
お休みさせていただいております。
と言った表現もよく聞きます。
これは
条件(2)(3)の点で
不自然な表現となります。
休む許可は誰からもらったのか?
(まさか電話の相手から、
というわけがありません。
そして、
それをわざわざ電話してきた人に
言う必要があるのか・・・?)
また、
誰に感謝しているのか?
冗長感が否めません。
ここは会社ですから、
社会人の敬語として
「本日、田中は休んでおります」
というような
すっきりとした表現を
使ったほうがいいですね。
では
自己紹介の時によく聞く
以下の表現はどうでしょうか。
3年前に
大学を卒業させていただきました
これは
一番最初に挙げた例文と同じで、
(2)の条件が気になります。
卒業するのに、誰から許可をもらったのか・・・。
わざと額面通りに受け取ると
以下のような解釈が可能です。
●「卒業した」のは
自分自身が頑張ったからではないのか・・・?
●そうでないとすると、
卒業できない成績だったのにもかかわらず、
誰かの特別な計らいで、
卒業できたということか・・・?
また、
「~させていただきます」の表現が
単なるへりくだりの形式である、
と認識している人は
●皆さんのおかげで
「卒業させてもらった」という
謙虚な気持ちを述べているのだろう。
●卒業できたことを
すごく丁寧に言いたいのだろう。
のように感じているかもしれません。
この「卒業させていただきました」
という表現を用いると
自分のことを理解してもらう
せっかくの自己紹介なのに
人々の心には
雑念がよぎり始めます。
普通に卒業したのなら、
「卒業いたしました」
のように、
すっきりとした表現を選びましょう。
自己紹介で変に誤解されては
それこそ、もったいないことです。
「今年大学を
卒業させていただいたばかりですが、
このような仕事を
させていただくことになり、
その経緯について、
これから述べさせていただきます!」
う~ん・・・
そういいたくなる気持ちは
わからないではないけれど・・・
どう思われますか?
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ではではニゴでした。