連体修飾(名詞修飾)・その1
ある日本語教師の方から質問を受けました。
(1)×激しかった雨が降りました。
(2)〇あの激しかった雨は確か午後5時ごろ降りました。
(1)の「激しかった」は どうしてだめで、
(2)の「激しかった」は どうしてOKなんですか・・・。
学生からの質問なんですが、うまく答えられません。
みなさんだったら、どう答えますか。
学生が初級なのか、中級なのか、上級なのかで
説明の仕方はだいぶ違ってくるでしょう。
ここではまず、説明するために必要な
教師として知っておきたい文法用語を整理します。
連体修飾(名詞修飾)
田中さんは日本語を教える仕事をしています。
上の文の「日本語を教える」は、「仕事」を修飾しています。
そこで、「日本語を教える」を
- 国文法では「連体修飾」
- 日本語文法では「名詞修飾」と言います。
「日本語を教える」が
「仕事」という名詞を修飾しているので、「名詞修飾」と言う。
やはり、日本語文法では用語の名前をわかりやすくしています。
さて、ここからは一番最初の質問に答えること、
そこに的を絞ってお伝えしていきます。
連体修飾(名詞修飾)は
名詞を修飾する動詞や形容詞のテンス、アスペクトと
関係してきます。
複雑で、なかなか
「これは」といった例外のない規則が見つかりません。
そこで、
最も応用が効きそうな考え方を見ていきましょう。
初級の学生にも対応できる方法がいいですね。
名詞修飾は
(1)名詞修飾語と(2)名詞修飾節
に分けられます。
(1)名詞修飾語(連体修飾語)
(1)学生の自転車
→ 学生(名詞)が自転車(名詞)を修飾している
(2)あの 人、 あの 日、
→ あの(連体詞)が人(名詞)を修飾している
(3)白い 花、 美しい 花、
→ 白い(イ形容詞)が花(名詞)を修飾している
(4)きれいな 花、 元気な 子供、
→ きれいな(ナ形容詞)が花(名詞)を修飾している
(5)太った 人、 遊んでいる 子供、
→ 太った(動詞)が人(名詞)を修飾している
(2)名詞修飾節
(1)コンビニで買った コーヒー
(2)王さんがくれた パン
(3)お酒が大好きな 仁子さん
上記の(1)~(3)は
述語を含む複数の語(コンビニ、で、買った)が名詞を修飾しているので
名詞修飾節と言います。
*コンビニ で 買った コーヒー
。。。↑
(複数(3っつ)の語、この場合述語は「買った」)
質問はどうして
(1)の「激しかった」はだめで、(2)の「激しかった」はOKなのか、でした。
(1)×激しかった雨が降りました。
(2)〇あの激しかった雨は確か午後5時ごろ降りました。
形容詞(激しい)の修飾なので、これについて見ていきます。
形容詞が名詞を修飾する場合も、
①名詞修飾語として修飾している
(例)白い コーヒーカップ
②名詞修飾節として修飾している
(例)コーヒーが大好きな 田中さん
の、二通りがあります。
しかしながら、時にはそれが
①語として名詞を修飾しているのか、
②節として名詞を修飾しているのか、が
ぱっと見ただけでは わからない場合があります。
ただ、はっきりしていることは
語として名詞を修飾している形容詞には
テンス的な意味がありません。
テンス的な意味をもつのは
節として修飾する形容詞だけです。
<ちょっと復習>
テンス(時制)
テンス的意味とは その文の中に
時間的な見方があるか、ないか、ということです。
①語としての形容詞が名詞を修飾する
(→テンス的な意味がない)
(1)白い セーターを買いました。
(2)クラスの中で一番元気な 学生は 王さんだと思います。
②節としての形容詞が名詞を修飾する
(→テンス的な意味がある)
(1)気分が悪い 人は 早く帰ってください。
(2)一晩中うるさかった 隣の部屋のラジオは 朝になると静かになった。
(1)→気分が悪いのは今で、時間の流れがある。
(2)→ラジオがうるさかったのは、朝までで、時間の流れがある。
質問の回答への道筋
(1)A 〇激しい雨が降った。
(1)B ×激しかった雨が降った。
どうして(1)Bは 言えないのか。
(1) 雨が降った。
。。。。。↑
ここは、語としての修飾語が適当です。
●どんな雨が降ったんですか?
→激しい雨、 静かな雨、 冷たい雨、 強い雨、・・・・・・
(1)激しい雨が降った。
これは、どんな雨なのかという、雨の特徴、性質を述べています。
(1)のような語として名詞を修飾する名詞修飾語の形容詞は
「た形」には できません。
(2)A 〇あの激しい雨が夕方やっとやみました。
(2)B 〇あの激しかった雨が夕方やっとやみました。
●(2)Aは名詞修飾語としての用法です。
弱い雨でもなく、静かな雨でもなく、強い雨でもなく、
「激しい」雨がやんだのです。
●(2)Bは名詞修飾節としての用法ですから、
テンス的意味が入ってきます。
つまり、この文の中には時間の流れが含まれています。
(お昼頃降り出した激しい雨、その雨が、一時、二時・・・・・・五時、
夕方になって、やっとやみました。今が何時なのかはわかりませんが、
この文の作者は、こうした時間の流れを意識して書いています)
ちょっと参考に → ①名詞+だ、 ②状態を表す動詞
また、①「名詞+だ」 ②「状態を表す動詞」も
「形容詞の名詞修飾」と同じようなことが言えます。
つまり、
名詞修飾節として修飾する場合には、
その文の中にはテンス的意味がある、ということです。
①初めて会ったとき、まだ学生だった私たちが今では還暦を迎えようとしている。
②以前スーパーがあった場所に ゲームセンターができた。
質問の回答
(1)×激しかった雨が降りました。
(2)〇あの激しかった雨は確か午後5時ごろ降りました。
質問
(1)の「激しかった」は どうしてだめで、
(2)の「激しかった」は どうしてOKなんですか・・・。
これまでの説明で、解答はわかったと思います。
しかしながら、相手は学生です。
どうやって説明しましょうか。
ましてや、初級の学生だった場合、手ごわいですね。
どうぞ、考えてみてください。
次回は
学生に対して、どう説明するのかを具体的に書いていきたいと思います。
次回をご覧になりたい方は、以下をクリックしてください。
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ではではニゴでした。