複合格助詞「~に対して」(その1)

複合格助詞「~に対して」例文

(1)大谷選手は記者の質問に対して、一つ一つ丁寧に答えた。
(2)AIの目覚ましい進歩に対して、脅威を覚える。
(3)A監督は選手に対して、厳しすぎる。

「~に対して」の形と意味
~名詞(←対象)  に対して、 動作・感情などを表す述語) 
*「(名詞に対して」は、動作や感情が向けられる対象を表しています。
つまり、
「この動作を向けている対象は、~に対しての前の言葉です」
「この感情を向けている対象(相手)は ~に対しての前の人です」
というように、
対象(相手)をはっきり指し示す役割を担っています。

 

(例)目上の方に対して、手紙を書くのは緊張する。

この(例)は、対象相手の場合です。

 

意味としては、
「手紙を書くという動作が誰に向けられているかと言うと、
その対象(相手)目上の方です」
ということになります。

 

*ここでは、初めに、
複合格助詞とは何なのか、どうして必要なのかについて考えます。
次に、
複合格助詞「~に対して」の意味について、見ていきます。

 

複合格助詞

複合格助詞というのは、
複数の語が結びついて、一つの助詞として機能します。
そこで、複合格助詞と呼ばれています。

複数の語とは、「に」 +「対して」 のことです。

格助詞は、
「が、を、に、へ、と、から、より、まで、で」の九つです。
(*諸説ありますが・・・・・・)

初級では、この九つを中心に学びます。

中級になると、
「~に対して」 「~について」 「~に関して」
といった、長い助詞、つまり複合格助詞を学び始めます。

複合格助詞が必要な理由

初級の助詞だけでも、たくさんあるのに、
どうして複合格助詞のような長い助詞があるのでしょうか。

理由はいくつか考えられます。

複合格助詞が必要な理由(1)

格助詞「に」「で」などは
非常に多くの意味を持ちます。

そこで、
多くの意味の中から今使っている助詞は
「こういった意味ですよ」と、
その意味をはっきりさせたいときに使います。

つまり、
格助詞と同じ意味を持つのですが、
その意味をより際立たせたいときに使うのです。

*格助詞と同じ意味を持つ。
複合格助詞を使うことによって、その意味を際立たせる。

複合格助詞が必要な理由(2)

格助詞は九つあります。
その一つ一つの格助詞が、それぞれに違う意味を持っています。

しかしながら、
それでも足りず、もっと違う意味を表したいときがあります。

そんなときに、複合格助詞を使います。

*複合格助詞は、格助詞とは違う意味を表す。

複合格助詞が必要な理由(3)

人は 話し言葉なのか、書き言葉なのか によって、
使う表現、語彙などを選んでいます。

また、書くときには
論文なのか、日記なのか、小説なのか などによって、
やはり、それに合った文体や表現、語彙を使い分けています。

*複合格助詞は、書き言葉に多く使われます。

複合格助詞「~に対して」の成り立ち

~に対して」は
動詞の「対する」からできた言葉です。
つまり

「~に対して」 = 格助詞「に」 + 動詞「対する」のて形

上記のような成り立ちを持ちます。
その成り立ちから、「~に対して」という複合格助詞は
動詞「対する」の意味を色濃く持っています。
「他のものに向かう」「応じる」といった意味です。

それをイメージ化してみると、以下のようになります。

 

 

 

~に対して」は
物事Pに対して、真正面から向き合うイメージです。
Pに向けられる方向を表しています。

複合格助詞「~に対して」の意味

~に対して」の意味は
大きく二つに分けられます。

(1)対象 (2)対比

(1)対象の例
その福祉施設は犬型ロボットに対して、かなり関心をもっている。

→「~に対して」は、
「関心をもっている」対象は何かと言えば、
犬型ロボットです。というように、
感情の向けられる対象をはっきりと指し示しています

(2)対比の例(前件・後件二つの事柄を対比する)

(例)10人の敵に対して、味方は3人しかいない。

(例)兄はスポーツばかりしているのに対して、妹は本ばかり読んでいる。

対比は二つの事柄を並べて、
前件の文と後件の文とを比べています。

まずは、(1)対象(2)対比とある意味のうちの
(1)対象について、見ていきます。

 

複合格助詞「~に対して」の意味(1)対象

対象」は、さらに細かく四つに分けることができます。

(1)行為が向けられる対象
(2)行為を受けて反応する対象
(3)感情・心的態度の向けられる対象
(4)効果が出る対象

(1)の例
政府は被災者に対して、救援物資を送った。

→「~に対して」は救援物資の送り先である対象を表します。
(救援物資を送るという行為は、誰に向けて行われたのかと言うと、
被災者の方です。)

(2)の例
F氏はA議員の質問に対して、反論した。

→「~に対して」は誰に対して反応したのかという対象を表しています。
(F氏は質問されたことに対して、反論しました。つまり、
相手から受けた行為に対して、反応した相手は誰かというと、A議員です。)

(3)の例
マスコミは大統領の言動に対して、失望している。

→「~に対して」は
「失望している」という心的態度が向けられた対象を表しています。
(マスコミが失望している対象は何かというと、大統領の言動です。)

(4)の例
この薬は新型ウイルスに対して、効果がある。

→「~に対して」は
「効果が出ている」対象を表しています。
(この薬が効く病気(対象)は何かというと、新型ウイルスです。)

 

上記のように意味を四分類することによって、
複合格助詞「~に対して」が
どんな述語と一緒に使われるのかも見えてきます。

*述語とは
ここでは動詞や形容詞を指します)

ただし、上記のように分類しても、
意味がはっきりと四つに分かれるわけではありません。

意味の境界は
連続していたり、あいまいであったりします。

 

*複合格助詞「~に対して」(その2)にでは、
対象の詳しい意味(1)~(4)について、見ていきます。

https://www.tomojuku.com/blog/nitaishite2/

 

ではではニゴでした。

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