もう一歩踏み込んだ、間接受身
受身の分類について
受身には、いろいろな分類の仕方があります。
たいていは、以下の分け方をします。
直接受身 vs 間接受身
有情の受身 vs 無情の受身
間接受身の分け方は、研究者によって変わってきます。
だいたい、この2通りに分けられます。
1、間接受身(間接受身、持ち主の受身、自動詞の受身)
2、間接受身(間接受身、自動詞の受身)、持ち主の受身、
1は、間接受身 vs 直接受身のように、直接受身に対して、間接受身があるとする立場です。
持ち主の受身や自動詞の受身も、間接受身のグループに入ります。
2は、直接受身 vs 間接受身(自動詞の受身)vs 持ち主の受身
この3グループに分けます。
テキストによって、どのわけ方に準拠しているのか、異なります。
(有情の受身と無情の受身で分けているテキストもあります。)
間接受身について
【能動文】
(1)アンさんは 海外へ 引っ越した。
(2)田中さんは アンさんに 花束を 贈った。
(1)の「引っ越す」は 自動詞です。
(2)の「贈る」は他動詞です。
もし、話者が、田中さんやアンさんと、一般的な関係なら、
(1)(2)のように、客観的事実を述べます。
でも、話者は アンさんのことが好きで、
田中さんを恋敵(ライバル)とみなしていたら・・・
【受動文】
(3)アンさんに 海外へ引っ越されて、さびしくてたまらない。
(4)(アンさんに花束を贈ろうと思っていたのに、)田中さんに先に贈られてしまった。
(3)(4)のように、受身文を使って、自分の心情を述べるでしょう。
話者にとっては、アンさんや田中さんのした行為が嫌なことで、
二人のした行為から、悲しい気持ちになったのです。
(しかし、話者は「アンさんにたたかれた」のように、
直接的に被害を受けたのではなく、間接的に影響を受けています。)
そこで、間接受身と言います。
間接受身は(1)のように、自動詞「引っ越す」からも、
(2)のように、他動詞「(花束を)贈る」からも、作ることができます。
自動詞の間接受身(3)と他動詞の間接受身(4)には、共通点が2つあります。
1、主語が「私」。
2、動作主を「に格」で表す。アンさん「に」、田中さん「に」。
1:(3)(4)の受動文は、能動文には含まれない「私」が主語になっています。
2:(3)の動作主は引っ越したアンさん。(4)の動作主は、花束を贈った田中さんです。
間接受身の特徴
【受動文】
(3)(私は)アンさんに 海外へ引っ越されて、さびしくてたまらない。
(4)(アンさんに花束を贈ろうと思っていた)
(私は)田中さんに 花束を 先に贈られてしまった。
1、間接受身文の主語は「人」で、その人はたいてい「私」です。
普通「私」は、省略されます。
*人が主語でない場合:その主語は、人に準ずるものです。
例えばその人が所属している組織とかになります。
2、動作主は「に格」で表します。「~によって」は使えません。
3、「引っ越す」のような自動詞(もちろん他動詞)からも、受身文を作ることができます。
間接受身の主語が第三者の場合
間接受身の主語はたいてい、「私」だとお伝えしました。
(5)(私は)弟に 楽しみにしていたケーキを 食べられてしまった。
第三者も、間接受身の主語になれます。
(6)田中さんは アルバイトに 休まれました。
(7)川口さんは 友達に 手紙を 読まれました。
(6)(7)を読んだとき、非文ではないけれど、
ちょっと違和感を覚えませんでしたか。
そこで、第三者の気持ちを付け加えてみます。
(6’)田中さんは アルバイトに 休まれて、とても困りました。
(7’)川口さんは 友達に 手紙を 読まれて、恥ずかしい思いをしました。
(6)(7)に比べて、すわりがよくなりました。
受身を導入するときには、その人の気持ちや受身を使わざるを得ない状況を用意します。
受身文の主語を第三者にするときは、その人の気持ちを言った方が、学生にとっても
わかりやすくなります。
間接受身の動作主を示す「に格」について
(8)(私は遅刻したので)
先生に 校門を 閉められて、学校に入れなかった。
(9)×先生によって 校門を 閉められて、学校に入れなかった。
間接受身では、動作主を表すのは「に」で、「~によって」は用いられません。
なぜなら、「~によって」は原因のありかを示す複合格助詞だからです。
つまり、学校に入れなかった原因は、「先生」(によって)ではありません。
「先生が校門を閉めた」ことによって、入れなかったのです。
(10)先生に校門を閉められたことによって、学校に入れなかった。
間接受身の動作主を表すのは「に」だけです。
直接受身は「に」「によって」「から」なども使うので、学習者にとっては 難しいと言えます。
直接受身の助詞について知りたい方は、コチラをご覧ください。
>>受身の助詞「に」「から」
ではでは ニゴでした。