日本語教育の参照枠

2021年3月10日に
最終的に報告された
「日本語教育の参照枠」については
ご存じの方も多いと思います。

2024年の今、
●「日本語教育の参照枠」に対応し、
教え方を変えようとしている機関と、

●「日本語教育の参照枠」は尊重しつつも、
教え方は今までどおりに行っている、

という機関に分かれているようです。

もしも自分が
教え方に全く変化がない、
という機関に所属しているとしても、

この「日本語教育の参照枠」
今後の日本語教育の方向性を指し示す
大切な指針です。

ですから、
日本語教師としては
この「日本語教育の参照枠」についての知見を
持っておくべきだろうと考えます。

さらには
それを理解するだけではなく、
自分自身で
「日本語教育の参照枠」を参考にしながら、
少し授業を変えてみる、
ということも「いいのではないかなあ」と
思います。

こうした
試行錯誤を繰り返すことによって、
自分の教師としてのスキルが
上がっていくはずです。

では
日本語教育の参照枠」について
見ていきましょう。

「日本語教育の参照枠」とは

1.どこでまとめられたのか?

「日本語教育の参照枠」
文化審議会国語分科会で取りまとめられました。

※文化審議会国語分科会というのは
日本の文化庁の一部で、
日本語教育の方針や基準を
設定する役割を担ってる機関です。

余談ですが、
良く見聞きする国際交流基金は
国際交流基金法という法律によって、
日本国内の日本語教育支援を
行うことはできません。

日本語教育支援’という観点から
みてみると、

・日本国内では文化庁がその役割を担い、
・国外では国際交流基金が担当する、

という体制がとられています。

2.いつから「日本語教育の参照枠」
・・・・についての話し合いが始まったのか?

文化審議会国語分科会では
2019年(令和元年)から
策定に向けて審議が続けられ、
第一次報告、第二次報告を経て、
2021年3月10日に
最終報告がおこなわれました。

3.その内容とは?

「日本語教育の参照枠」
についての内容を
ごく簡単に説明します。

日本語教育の参照枠」とは
日本語を教える際に
日本語教育に関わる人なら
誰でも
参照でき、活用できる枠組みのことです。

この参照枠は
日本語を学ぶ人々が

・どのようなスキルを持つべきか、
・また、そのスキルをどのように評価すべきか、

を示すためのフレームワークとも言えます。

そして、
この参照枠は
学習者の日本語の習得段階に応じて求められる
日本語教育の内容と方法を
明らかにすることを目指しています。

つまり、

・学習者が今どのレベルにいるのか、
・この段階では何を学ぶべきなのか、
そして
・どのように評価されるべきなのか、

を示すためのガイドラインを提供しています。

これにより、
日本語学習者や教師は

・学習の進行段階をより具体的に理解し、
・適切な学習目標を設定することができ、
・その達成度を評価することが容易になります。

また、この参照枠は

・日本語教育の質を向上させ、
・学習者が日本語を効果的に学ぶことができ、
・学習者の日本語を使う能力を高める、

こうしたことを支援していくべきだ、
という使命を掲げているように思われます。
(まだまだ最初のステップですが・・・)

「参照枠」日本語教育のは

ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)を
参考にして策定されました。

全文は156ページもある大作です。
なかなか読み通すのは大変だと思ます。

そこで
今回は
非常に大切だと思う基本的な理念
以下に引用しておきます。

 

ーーーー<以下は引用です>----

日本語教育の参照枠の言語教育観

1.日本語学習者を社会的な存在としてとらえる

→学習者は
単に「言語を学ぶ者」ではなく、
「新たに学んだ言語を用いて社会に参加し、
よりよい人生を歩もうとする社会的存在」
である。

言語の習得は
それ自体が目的ではなく、
より深く社会に参加し、
より多くの場面で
自分らしさを
発揮できるようになるための手段である。

 

2.言語を使って「できる」ことに注目する

→社会の中で
日本語学習者が自身の能力を
より生かしていくために、
言語知識を持っていることよりも、
その知識を使って
何ができるかに注目する。

 

3.多様な日本語使用を尊重する

→各人にとって必要な言語活動が何か、
その活動を
どの程度遂行できることが必要か等、
目標設定を個別に行うことを重視する。

母語話者が使用する日本語の在り方を
必ずしも学ぶべき規範、
最終的なゴールとはしない。

●日本語学習者を
「社会的存在としてとらえる」
とは、どういうことか?(補足)

「日本語教育の参照枠」では
学習者を社会の一員として
人々と関係を持ちながら、
日本語を使って
様々な課題を解決しようとする
存在としてとらえます。

どうして、このようなことを
言語教育観の柱として
示しているのでしょうか?

例えば
日本語を教える際にも、

ある文法事項を
実際の言語使用の場面などと
関係なく教える、

全員に
同じ漢字・語彙を教えるなど、

多くの場合、
教える側の事情によって、
学習者を
異なりのない均一的な存在として
とらえてしまうことはないでしょうか。

そうではなく、
学習者が置かれている
様々な背景や社会的な状況に応じて、

・生活の中で必要な表現や話し方、
漢字・語彙をを学ぶ、
・仕事で求められる技能を優先的に伸ばす

といったことが大切です。

特に成人の場合は
すでに持っている知識や経験を生かして
学ぶことができるのです。

このように
一人一人異なる状況に応じた学びを
支えるための枠組みとして
「日本語教育の参照枠」
編まれました。

社会と教室を隔てることなく、
学習者一人一人の豊かな多様性を生かし、

日本語を通した学びの場を
人と人が出会う社会そのものとすることによって、
共存社会の実現を目指す。

それが
日本語学習者を社会的存在としてとらえる
という言葉に込められた意味なのです。

 

日本語教育の参照枠の評価の三つの理念

1.生涯にわたる自律的な学習の促進

2.学習の目的に応じた多様な
・・・・評価手法の提示と活用推進

3.評価基準と評価手法の透明性の確保

 

ーーーー<上記は引用です>ーーーー

今までの引用した部分は
日本語教師だけではなく、
日本語を教えることに関わっている
全ての人々が
常に意識しておかなければならない、
日本語教育への
「向き合い方」が示されています。

私たち日本語教師は
学習者に
「機械的に日本語を教えるだけでいい」
という存在ではないということです。

私たちは学習者を
一人の社会的存在としてとらえ、
学習者と共に成長していくことが
大切なのだと思います。

そして
学習者一人一人が、
・日本語を使って、
・日本語を活用しながら、
・社会の一員になっていくことを

教師が応援し、サポートしていく、

私たちは
こうした意識をもって
日本語を教えていくことが
大切なのだと思います。

また、
学習者の視点から見れば

学習者自身が社会の中で、
他者と共に生きていくためには
●どのような日本語能力が必要で、

社会で活躍するには
(仕事をしていくうえでは)
●自分の日本語能力のどこを
伸ばしていったらいいのか、を

学習者自身が
客観的に理解することが必要です。

学習者は
周りから与えられたものを
ただ漫然と、
何も考えずに学ぶのではなく、
●自律的に、自主的に、
自分で学ぶべきことを
自分で探し出していく、

こうした
積極的な態度こそが大切です。

「日本語教育の参照枠」
正しく活用すれば
こうしたことを助けてもらえるのです。

ここにリンクを張っておきますので、
以下から、
「日本語教育の参照枠」をご覧ください。

参照枠報告は
全部で156ページもあるので、
前書きだけでも、ゆっくり読んでみてください。

●日本語教育の参照枠報告(PDF)(全156ページ)

 

次回は
「日本語教育の参照枠」を
どう授業に落とし込んでいくのかについても
考えていきたいと思います。

 

ではではニゴでした。

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