韻を踏むとは?(その2)

NHKの
『チコちゃんに叱られる』
という番組から。(その2)

チコちゃんの
「何で韻を踏むと気持ちがいいのか?」
という問いに、
その答えは

 .⇒韻を踏むと気持ちがいいのは
リズムと同時に驚きを味わえるから、

というものでした。

この記事は前回の続きです。
前回をご覧になりたい方は
以下をクリックしてください。
→韻を踏むとは?(その1)

まずは
前回の復習から。

韻を踏むとは?

韻は
詩や歌詞、小説、キャッチコピーなどに
使われます。短歌にも使いますね。

韻を踏むとは押韻ともいわれ、
似た響きの音を繰り返す手法のことです


大きく二種類に分けられます。
それが脚韻頭韻です。

わかりやすい脚韻の例

●セブンイレブン、いい気(きぶん

このキャッチコピーは
ぶん」という音を繰り返しています。
繰り返された「ぶん」は
言葉の後ろにあります。

そこで
これを脚韻と言います。

わかりやすい頭韻の例

北原白秋の『落葉松』の詩

・・・
からまつの林を過ぎて
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。

・・・
からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細くみちはつづけり。

一、二を見ると
からまつ」という音を繰り返しています。
繰り返された「からまつ」は
言葉の頭にあります。

そこで
これを頭韻といいます。

上記の詩は、抜粋です。
この詩は 全体では
頭韻だけでなく、
脚韻も使われており、
独特のリズムを生んでいます。

とても素敵な詩なので、最後まで
書いておきますね。

・・・
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよう道なり。

・・・
からまつの林の道は
われのみか、ひともかよいぬ。
ほそぼそと通う道なり。
さびさびといそぐ道なり。

・・・
からまつの林を出でて、
ゆゑ知らず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。

・・・
からまつの林をででて、
浅間嶺(あさまね)にけぶり立つ見つ。
浅間嶺(あさまね)にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうえに。

・・・
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。

・・・
世の中よ、あわれなりけり。
常なけどうれしかりけり。
山川に山がわの音、
からまつにからまつのかぜ。

 

この北原白秋の詩は
押韻を多用しており、
独特のリズムがあります。

では、
韻が作り出すリズムが
人を心地よいと感じさせているのかどうか、
次は
医学的に見てみます。

韻を踏んだ時の脳波を調べてみる

韻を踏んでいる時の
脳の様子を調べてくださったのは
明治大学教授の
堀田秀吾氏です。

被験者となってくださったのは
ラッパーのCAKEーKさんです。

実験としては
韻を踏んでいるラップを聞いている時と
韻を踏んでいないラップを聞いている時との
脳波の違いを計測します。

つまり
韻あり韻なしのラップを聞いたとき
脳波は
違っているのかを調べます。

聞かせるラップは
以下の通りです。

韻ありのラップ>

今日はチコちゃんに叱られる
質問されたら 俺焦る
鋭い指摘に 目が覚める
汗が垂れるし 俺帰る

<韻なしのラップ>

今日はチコちゃんに叱られる
質問されたら 俺やだな
鋭い指摘に びっくりし
汗がダラダラ どうしよう

はたして、
韻あり、韻なしでの脳波の違いは
あったのでしょうか?

韻あり、韻なしの脳波の違い

まず、
脳波には4種類あります。

・δ(デルタ)波
・θ(シータ)波
・α(アルファ)波
・β(ベータ)波

デルタ波
徐波睡眠(深睡眠・ノンレム睡眠)時に
現われます。

シータ波
眠気があるときに、

アルファ波
目覚めた状態で
リラックスしていたり、
集中している状態のときに、

ベータ波
目覚めている時に通常出ている脳波で、
緊張や心配事がある場合にも現れます。

韻あり、韻なしで変化が現れたのは
アルファ波でした。

韻ありの時に
アルファ波が突出して現れ、
韻なしの時には、
小さく出現しました。

アルファ波というのは
幸福感、集中力、リラックス
関係している脳波です。

これにより、
韻ありのラップを聞いている人は
心地よいと感じていることが
わかります。

言語学者の川原繁人氏によると、

ラップを聞いている人というのは
韻を期待して聞いている。
そこで、
期待通り韻を踏んでくれると、
「おー!韻が来た~!」
ということで、
幸福感が得られる

という解説をなさっていました。

 

ラップのことを色々調べていたら、
2005年頃
「日本語はラップに向かない」
という論争が起こっていました。

日本語はラップに向かないのか?

「日本語はラップに向かない」
という人の理由は・・・

英語の母音はたくさんあるけれど、
日本語の母音は5つしかない。
しかも、
英語は子音で終わる単語がたくさんあるけれど、
日本語には
そのような単語がない、

ということが、
「日本語がラップに向かない」
という主張の理由のようでした。

この議論に学術的に終止符を打ったのも
慶応義塾大学教授の川原繁人氏でした。

以下のラップの一部を見てください。

『MASTERMIND』

(歌:DJ  HASEBE)
作詞:MUMMY-D,ZEEBRA
作曲:DJ  HASEBE

けっとばせ けっとばせ
けっとばした歌詞で
Get   money    Get   money

 

日本語のラップの韻は
母音を合わせると言われていました。

しかし、
川原氏には子音でも
似た音を合わせている
という直感があったそうです。

ke   tto   ba   se (けっとばせ)

ge   tto   m ne (Get money)

まずは母音から。
母音は
「e   o   a   e   」で合っています

次に子音を見てみます。
「k」と「g」を比べると・・・

「か」と「が」を発音してみると
わかりますが、
「k」と「g」は
発音する場所(調音点)が一緒です。

調音点:口の中で子音を発音する場所

けっばせ
kettobase

gettomane
ゲッマネー

「けっばせ」の「」と
「ゲッマネー」の「」は
全く同じ音です。

そして
「けっと
「ゲットー」
ば・b    せ・s
ま・m      ね・n

」と「
」と「」も
唇の使い方や、舌の位置が
それぞれ同じです。

このことは
全ての子音が(口の中の)
どこで発音するかが
完全に一致しています。

ということは
母音だけでなく、
子音でも
似たもので押韻しています。

これによって、

日本のラッパーは
適当に単語を合わせて
韻を踏んでいるのではなく、
子音の響きにも気を使っている

ということが
科学的に証明されたのです。

日本のラッパー、恐るべし!です。
素晴らしい!ですね。

こうして詳しく分析された話を聞くと、
ラッパーの方々は
日本語の語彙を豊富に持っており、

その豊富な語彙群から、一瞬の判断で
押韻している語彙を選び出している。

ラッパーの方々は
音楽以外にも
こうした
語彙力や瞬発力といった
様々な能力が
必要だということがわかりました。

 

 

ではではニゴでした。

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