特殊な使役
「意志動詞の使役文」の対象
●使役とは、人にある行動をとるように仕向けることです。
人に「~してください」と指示して、その指示通りに行うよう、仕向けるのです。
つまり、使役というのは「人」に指示して、やらせることなので、
使役文が「人」を対象とするのは当然です。そして、
その動詞も多くは意志性のある動詞です。
使役:「Aは B(に/を) Vさせる」のA、Bは 「人」です。
(例:先生(人)は 学生(人)に 勉強させる)
●一般的に意志動詞の使役文の対象は有情名詞(人)です。
(1)(○人/×荷物)が 車に 乗る。 :自動詞
(2)私は(○人/○荷物)を 車に 乗せる :他動詞
(3)私は(○人/×荷物)を 車に 乗らせる。 :自動詞使役文
(4)(○人/×荷物)が 集まる。 :自動詞
(5)私は(○人/○荷物)を 教室に 集める。 :他動詞
(6)私は(○人/×荷物)を 教室に 集まらせる。:自動詞使役文
(7)(○人/×荷物)が 舞台に 上がる。 :自動詞
(8)私は(○人/○荷物)を 舞台に 上げる。 :他動詞
(9)私は(○人/×荷物)を 舞台に 上がらせる。:自動詞使役文
特殊な使役文
●意志動詞「立つ」
●上記では、一般的に
意志動詞の使役文の対象は有情名詞(人)
だと、見てきました。
(1)校庭に(○人/○旗)が立つ。 :自動詞
(2)校庭に(×人/○旗)を立てる。 :他動詞
(3)校庭に(○人/×旗)を立たせる。 :自動詞使役文
ところが、「卵」は無情名詞であるにもかかわらず、
使役文をとります。
(4)彼は 上手に 卵を 立たせた。
「卵」以外の無情名詞「旗」のときは、
(5)彼は 校庭に 旗を (×立たせた/○立てた)。
「使役形」を使うと、非文となり、
「他動詞・立てる」を使います。
どうも「卵」の場合が、例外的と言えそうです。
(4)彼は 上手に 卵を 立たせた。
では、どうして「卵」の場合は、「人」に使う使役形、
「立たせる」を使うのでしょうか。
「立つ」の使役形「立たせる」
「物」に使う他動詞「立てる」を
「人を立てる」のように使うと、人を物として扱っているようです。
反対に「人」に使う使役形「立たせる」を「旗を立たせる」のようにと言うと、
旗を人のように扱っているようです。
どうして、卵だと「立たせる」で違和感がないのでしょうか。
それは
「人」に「立ってください。」と言っても、
「立つ」かどうかは 最終的にはその「人」が決めます。
指示をだした人は、最終的にはコントロールすることができません。
いくら「親が子供に勉強させる」んだと、頑張っても、
勉強するかしないかは 最終的には子供が決めることです。
親は子供をコントロールできません。間接的にしか関与できないのです。
「立つ」の他動詞「立てる」
「立てる」は「(横になっていた)物を立てる」のように、
人が直接的にコントロールできます。
ここでは、他動詞は「直接的」
使役形は「間接的」という概念が当てはまります。
「物」である卵にどうして使役形「立たせる」を使うのか
使役形は「人」を対象とします。
卵は「物」です。
「物」なのに、どうして「人」を対象とする使役形を使うのか考えてみます。
では、冷蔵庫から卵を出してきて、立たせてみます。
簡単には立ちません。
旗や立て看板などは、とても簡単に立てられます。
卵の場合は、コントロールすることがとても難しいのです。
(人と同じですね。)
そこで、直接的にコントロールできる物に使う「立てる」ではなく、
コントロールするのが難しいときに使う「立たせる」を使います。
使役文にできない動詞を知りたい方は こちらをどうぞ。
>>使役文にできない動詞
ではでは ニゴでした。