漢字から見た「すみません・ごめんなさい・申し訳ありません」2

前回は日本語を体系的に学ぶために教える
すみません」の四つの用法についてみてきました。

(1)謝るとき
(2)お礼を言うとき
(3)呼びかけるとき
(4)お願いするとき

前回の「すみません」の用法をご覧になりたい方は
以下をクリックしてください。

https://www.tomojuku.com/blog/sumimasen/

今日は漢字から見た、
「すみません」「ごめんなさい」「申し訳ありません」
の解説です。

先日テレビの番組で漢字を使っての、
上記のを解説していました。
とても分かりやすかったのですが、
日本語の授業で教えているのと、
少しニュアンスが違うのです。

とても興味深かったので
ここでご紹介したいと思います。

解説をなさっていたのは
日本語大辞典元編集者の神永暁氏です。

まずは「ごめんなさい」からです。

ごめんなさい

「ごめんなさい」は漢字を使うと「御免なさい」と書きます。
この「」という漢字は「許す」という意味です。

「ごめんなさい」は「」を付けて丁寧に言ってはいますが、

「 御 + 免なさい ⇒ 許しなさい 」

と、命令しているのです。
つまり、「ごめんなさい」は
一方的に「許しなさい」と言っていることになります。

そこで、
「今この言葉を使って、この件は終わりにしたい」
というときに使います。

すみません

「すみません」は漢字を使うと「みません」と書きます。
」という漢字は「終わり」」という意味です。
つまり、「すみません」は

「済み」ではありません ⇒ 終わりではありません

となり、「このままでは終われません」と言っているのです。
「この件は このあとも償いたい」という気持ちがあるときに使います。

申し訳けありません

「申し訳ありません」の「し」は「言う」という意味です。
つまり、
「申し訳ありません」の意味は
「言うべきことは何もありません」
「すべて自分に非があり、償いようがありません」
という最上級の謝罪の言葉となります。

以上のことから、
ごめんなさい」は この場で終わりにしたいとき、
すみません」は
この場では終われません。このあと償いたいと思うとき、
申し訳ありません」は
すべて自分に非があり、償いようがないと思ったときに使います。

では、具体的にはどう使い分けるのか、
具体例を見ていきましょう。

具体例

(例1)ちょっと、ぶつかってしまったとき。

「ごめんなさい」

⇒ 相手にけがや被害はありません。
そこで、この件はこれで終わりにできるので、
「ごめんなさい」が適しています。

(例2)人にぶつかって卵を割ってしまったとき。

「すみません」

⇒ 卵を割ってしまったので、弁償したいと思ったときに使います。
「このままでは終われない」という気持ちを表すため、
「すみません」が適しています。

(例3)ぶつかって、相手のお母様の形見の品を壊してしまったとき。

「申し訳ありません」

⇒ この場合、壊してしまったのは、相手のお母様の形見の品です。
世界でたった一つの品で、弁償のしようがありません。
そこで、最上級の謝罪の言葉「申し訳ありまん」が適しています。

以上が神永暁氏の解説です。

以下に少しだけ「すみません」にプラスします。

「すみません」もう一つの意味

神永氏の言うとおり、
「済む」という言葉には、「物事が終わる」という意味があります。
(例、仕事が済む)

ですが、それ以外にも

「気持ちがはれる」
「気持ちがおさまる」
「心が澄み切る」

という意味もあります。
上記の意味で
「それでは私の気持ちが済みません」とうい使い方をしますよね。

つまり、
すみません」という謝罪は、失礼なことをしてしまい、
このままでは自分の気持ちが澄み切らない、おさまらない、
という状態であることを表しています。
そこで、
謝罪のあとに何かしらの行動が必要だと思った場合に
「すみません」を使います。

「すみません」「ごめんなさい」の使い分け

ごめんなさい」は家族間でよく使われます。
家族間で起こった問題は、
その時に解決し、後々まで引きずらない、
ことが最善だと思われるので
ごめんなさい」が適しているのでしょう。

また、学生が授業に遅刻してきたときは、
遅くなって、すみません」を使うように指導します。

それは
クラスのみんなに迷惑をかけたことと、
今後は もう、遅刻しませんという気持ちを表明してもらうために、
すみません」を使います。

しかしながら、
とっても親しい友だちとの間では
「すみません」はちょっと堅苦しいのかもしれません。
気の置けない友達との待ち合わせに遅刻してしまった場合、
その場で終わりにした方がいいのですから、
ごめんなさい」の方が適しているとも言えそうです。

結論としては、
漢字からの解釈からみても、フォーマルな場では
すみません」を使った方がいいですね。

ごめんなさい」は親しい人との間だけで
使った方が無難なようです。

特に、会社では
「すみません」を使うようにと、念を押しておいた方が
間違いが少ないと思われます。

本当に気心がわかっている、身内のような方となら、
会社でも「ごめんなさい」を使ってOKです。

追記

言葉を使って謝る場面とは どんな場合が考えられるのでしょうか。
おそらく、その場に置かれた時には、
冷静な精神状態でいられないのが普通です。

態度にも、表情にも
「ごめんなさい!」という気持ちが表れているはずです。

謝罪するような事態が起こってしまった場合、
人には、謝罪の言葉より、
本人の真摯な態度や謝る気持ちの本気度が伝わります。

そこで、
一番謝罪の程度が高い「申し訳ありません」のような言葉を使ったとしても、
気持ちが伴っていないならば、全く意味を成しません。

言葉というものは「正しさ」も必要ですが、
その時々の状況での、態度の「ふさわしさ」が
伴っていないと、意味が通じないものです。

授業でも、
やはり「気持ち」を大切にしていきたいですね。

ではではニゴでした。

サブコンテンツ

このページの先頭へ