「普通体と丁寧体」「普通形と丁寧形」
1.日本語教育の文体について
普通、文体というと
ある特定の作家に特徴的な文のスタイル、
ある特定の時代に特徴的な文のスタイル、などを思い浮かべます。
●日本語教育でいう「文体」とは
述語の形を中心として、
「文の中で、丁寧さのレベルが一定に保たれている書き方」のことです。
文章の中では一つの文体が一貫して使われます。
●日本語教育では
聞き手に対する敬意の度合いの差、
話し言葉と書き言葉の差、
などによる使い分けに注目します。
言葉の地域差、男女差、世代差などについては、
あまり詳しくは触れません。
●日本語教育では文体を
「丁寧体」と「普通体」という呼び方で提示します。
丁寧体の例
「どちらが好きですか?」
「これはどなたの傘ですか?」
「コーヒーを飲みますか?」
普通体の例
「どっちが好き?」
「これはだれの傘?」
「コーヒー、飲む?」
2.どんな場面で丁寧体・普通体を使うのか?
丁寧体
丁寧体は聞き手(読み手)に敬意を表すときに用いられます。
●初対面の方、目上の方と話すとき
●親しくない人と話すとき
●先生や会社(アルバイト先)の上司、先輩と話すとき
●改まった場面で話すとき
●手紙文で
このような時には丁寧体を使います。
普通体
●親しい友人と話すときに使います。
●文章を書く場合には、小説や日記、論文、レポートなどで使います。
3.「丁寧体」「普通体」と「丁寧形」「普通形」
「丁寧体」と「普通体」だけなら、あまり問題にならないのですが、
ここに「丁寧形」「普通形」という用語も出てきます。
用語がとても似ているので、
時に、使い分けがわからなくなったりします。
さらに、
「~形」がつくものでは、
「マス形」「辞書形」「ナイ形」「ナカッタ形」「タ形」・・・
などといった用語も出てきます。
ここでは
「丁寧体」「普通体」と「丁寧形」「普通形」
を整理しておこうと思います。
「丁寧体」と「普通体」
「丁寧体」と「普通体」は、「~体」と呼ばれているように、
文・文章全体にかかわってきます。
文末表現だけでなく、
名詞、こそあど、応答詞などにも、その区別があります。
名詞
丁寧体 → わたくし
普通体 → わたし、あたし、
こそあど
丁寧体 → こちら、そちら、あちら、どちら、
普通体 → こっち、そっち、あっち、どっち、
応答詞
丁寧体 → はい・いいえ
普通体 → うん・ううん
文末表現
丁寧体 → (写真を)撮ってもいいですか?
普通体 → (写真を)撮ってもいい?
「丁寧形」と「普通形」
「丁寧形」と「普通形」は、「~形」と呼ばれているように、
①動詞②イ形容詞③ナ形容詞の活用形のことです。
また、④名詞述語の活用形にも使います。
①動詞の丁寧形・普通形
丁寧形(=マス形)
動詞 | 現在 | 否定 |
現在 | 食べます | 食べません |
過去 | 食べました | 食べませんでした |
「食べます」の「普通形」は「食べる」
「食べません」の「普通形」は「食べない」
「食べました」の「普通形」は「食べた」
「食べませんでした」の「普通形」は「食べなかった」
のように使います。
*また、
「食べます」の「辞書形」は「食べる」とも言います。
しかしながら、
「食べません」の「ナイ形」は「食べない」とは言いません。
普通形
動詞 | 現在 | 否定 |
現在 | 書く(辞書形) | 書かない(ナイ形) |
過去 | 書いた(タ形) | 書かなかった(ナカッタ形) |
●「書く」の「丁寧形」は「書きます」
「書かない」の「丁寧形」は「書きません」
「書いた」の「丁寧形」は「書きました」
「書かなかった」の「丁寧形」は「書きませんでした」
*また、
「書く」の「マス形」は「書きます」とも言います。
②イ形容詞の丁寧形・普通形
丁寧形
イ形容詞 | 現在 | 否定 |
現在 | 高いです | 高くないです(高くありません) |
過去 | 高かったです | 高くなかったです(高くありませんでした) |
普通形
イ形容詞 | 現在 | 否定 |
現在 | 高い | 高くない |
過去 | 高かった | 高くなかった |
③ナ形容詞の丁寧形・普通形
丁寧形
ナ形容詞 | 現在 | 否定 |
現在 | 元気です | 元気じゃありません |
過去 | 元気でした | 元気じゃありませんでした |
普通形
ナ形容詞 | 現在 | 否定 |
現在 | 元気だ | 元気じゃない |
過去 | 元気だった | 元気じゃなかった |
④名詞述語の丁寧形・普通形
丁寧形
現在 | 否定 | |
現在 | 学生です | 学生じゃありません |
過去 | 学生でした | 学生じゃありませんでした |
普通形
現在 | 否定 | |
現在 | 学生だ | 学生じゃない |
過去 | 学生だった | 学生じゃなかった |
名詞を修飾するときに「~の」の形を取るものが名詞、
「~な」の形を取るものがナ形容詞です。
・ナ形容詞: 元気だ→ ×元気の人 ○元気な人
4.文中(表現の中)の一部分としての「普通形」
(2)「~と思います」
●あの人は日本語の先生だと思います。
(3)名詞修飾「V+N 」
●これはきのう買ったテープです。
●道がわからないとき、電話で聞いてください。
●雨が降ったけれども試合をしました。
追記1「ございます」
●「~でございます」
丁寧な話し言葉の中で、
「です・あります」の代わりに「ございます」が
用いられることがあります。
(例1)質問があります 。→ 質問がございます。
(例2)お手元に資料がおいてあります。→ お手元に資料がおいてございます。
(例3)こちらがお客様の商品です。→こちらがお客様の商品でございます。
(例4)お久しぶりです。→お久しぶりでございます。
追記2
●「ダ体」「デアル体」「デス・マス体」といった分け方もあります。
デス・マス体の例
彼は千葉大学の学生です。(名詞文)
毎日大学へは自転車で行きます。(動詞文)
陳さんの飼っている犬はかわいいですね。(イ形容詞文)
毎日忙しくて、大変です。(ナ形容詞文)
●「ダ体」「デアル体」の分け方には、注意すべき点あります。
名詞、イ形容詞、ナ形容詞、動詞の中で、
「ダ体」「デアル体」の違いがでるのは、名詞とナ形容詞だけです。
イ形容詞と動詞では違いがありません。
ダ体の例
これは、陳さんのランニングシューズだ。(名詞)
陳さんは いつも元気だ。(ナ形容詞)
デアル体の例
●吾輩は猫である。(名詞)
●彼は名監督である。(名詞)
●彼のような大人物に出会えたということは、
何よりの幸運である。(ナ形容詞)
※もし、
授業前に活用の名前の呼び方が
あやふやになってしまったら、
以下をご覧になってみてください。
ではではニゴでした。