「普通形と丁寧形」と述語の活用形の名称

『普通体と丁寧体・普通形と丁寧形』
という表題の記事では
日本語教育で言うところの「文体」について
考えました。

つまり、
「普通体」「丁寧体」の話です。
以下がその記事のページです。

→「普通体と丁寧体」「普通形と丁寧形」

上記のページでも
「普通」「丁寧」と
「普通」「丁寧」との違いについて
触れました。

ここでは
再度、その違いを説明しながら、
「普通形」「丁寧形」とともに
その周辺で使われている用語について
解説します。

周辺というのは、こうです。

日本語の述語は活用します。
そこで
「て形」「た形」・・・のように、
「~形」という言葉が多く現れます。

ところが、この名称には
決まったルールがなく、
テキストによって、違っていたりします。

そのへんのところを、
書き出しておこうと思います。

まずは、文体からです。

1.文体とは

ここでも少し、文体について触れておきます。

文体とは
文章全体の一貫したスタイルのことです。

日本語教育では
●「です・ます体」と「だ・である体」
●「書き言葉と話し言葉」の違い
●男性と女性の言葉の違い
●時代による言葉の違い
●今の時代の世代による言葉の違い
(例えば若者言葉の文体など・・・)

上記のようなことを、
授業で扱うこともあります。

文体(普通体・丁寧体)と「普通・丁寧」の違い

文体が文章全体のスタイルだとすると、
普通形・丁寧形は
文章の中の形です。
例えば

●山田さんは明日、図書館に行くと聞いています。

この文は丁寧体で書いてあります。

丁寧体の文ではありますが、
文中には
図書館に行く」(と聞いています)
のように、
普通形が組み込まれています。

「普通・丁寧」と「普通・丁寧」は
言葉が似ているので、
時に混乱しがちですが、

●文章全体の一貫したスタイルが「
●文章の中に組み込まれた、一部分の形が「
となります。

ここでは、文体(普通・丁寧)ではなく、
「普通」「丁寧」について見ていきます。

2.「普通形」と「丁寧形」

「普通」と「丁寧」は
「~」と呼ばれているように、
①動詞②イ形容詞③ナ形容詞
④名詞述語の活用形のことです。

丁寧形のことを
時に、「デス・マス形」と言うこともあります。
また、普通形のことを
「plain   form」と呼ぶこともあります。

●「普通形」と「丁寧形」を表にしてみます。

表1.「普通形」
動詞 食べる 食べる 食べない
食べた 食べなかった
イ形容詞 高い 高い 高くない
高かった 高くなかった
ナ形容詞 元気 元気だ 元気ではない
元気だった 元気ではなかった
名詞 学生 学生だ 学生ではない
学生だった 学生ではなかった

●普通形の(動詞・形容詞・名詞)文

例)先日、珍しい果物を食べた。
例)この靴は高い。
例)山田さんは いつも元気だ。
例)山田さんは学生だ。

この普通の一文を、
文章全体の一貫したスタイルとして使うと、
普通の文となります。

表2.「丁寧形」
動詞 食べる 食べます 食べません
食べました 食べませんでした
イ形容詞 高い 高いです 高くありません
高かったです 高くありませんでした
ナ形容詞 元気 元気です 元気ではありません
元気でした 元気ではありませんでした
名詞 学生 学生です 学生ではありません
学生でした 学生ではありませんでした

●丁寧形の(動詞・形容詞・名詞)文

例)先日、珍しい果物を食べました。
例)この靴は高いです。
例)山田さんは いつも元気です。
例)山田さんは学生です。

この丁寧の一文を、
文章全体の一貫したスタイルとして使うと、
丁寧の文となります。

 

3.文の一部分としての「普通

日本語教育では
「普通形」は
「文の中の一部分として使う」と考えると、
わかりやすくなります。

●この学校では日本語を学ぶことができます。

「動詞+ことができます」の表現を使った文では
「ことができます」の前の動詞が
普通形となります。

他にも
普通形を使う表現は
たくさんあります。少し紹介します。

(1)「~でしょう」

(2)「~と思います」
●あの人は日本語の先生だと思います。

(3)「~し、~し」
●このお菓子は
高いし、おいしくないし、嫌いです。

(4)名詞修飾「V+N 」
●これはきのう買ったテープです。

(5)「~かもしれません」
●明日は雪降るかもしれません。

(7)「~と言っています」
●トムさんは「参加しない」と言っています。
●雨が降ったので試合が中止になりました。

表現の接続の注意点

例えば、「~のに(逆接)」を
授業で教えるとき、

「~のに」が
どんな語の、どんな形に
接続するのかを提示するときがあります。

つまり「のに」の「~」部分の、
語の形です。

●このイチゴは「高かった」のに、おいしくない。

例えば
「普通形 + のに 」と教えたとします。

この場合、
動詞、イ形容詞は問題ありません。が、

ナ形容詞の普通形は
元気だ、元気ではない、
元気だった、元気ではなかった」
となります。

「~のに」の前にナ形容詞の「元気だ」をつなげる場合、

「元気(非過去・肯定形)」
「元気 → 元気な」
」を消して、「」に変えなければなりません。

元気のに、少しも動こうごとしない。

ところが、「普通形+のに」、と教えると

元気だのに、少しも動こうとしない。

のように、
「元気だ + のに」の形で、
文を作る、と
学習者は当然考えます。

そこで、
名詞、ナ形容詞の
(非過去・肯定形の)場合、

「~のに」前の接続の形は
普通形ではなく、
形が変わる
、ということを
授業ではきちんと確認しましょう。

 

4.普通形の体系

動詞の活用を勉強するときに
よく使われる言葉
「非過去」「過去」
「肯定形」「否定形」を記しておきます。
丁寧形
非過去 過去
肯定形 否定形 肯定形 否定形
書く 書きます 書きません 書きました 書きませんでした
食べる 食べます 食べません 食べました 食べませんでした
来る 来ます 来ません 来ました 来ませんでした
普通形
非過去 過去
肯定形 否定形 肯定形 否定形
書く 書く 書かない 書いた 書かなかった
食べる 食る 食べない 食べた 食べなかった
来る 来る 来ない 来た 来なかった

 5.よく使われる活用形の呼び方:動詞

日本語教育では
「辞書形」「ます形」「ない形」「た形」「て形」
といった名称をよく使います。
表には「連用形」も記載しました。
*連用形は学校文法で使われている用語です。
(日本語教育では、あまり使われていません)

辞書形 ます形 連用形
食べる 食べる 食べます 食べ
書く 書く 書きます 書き
する する します

 

ない形 た形 て形
食べる 食べない 食べた 食べて
書く 書かない 書いた 書いて
する しない した して

 

辞書形:辞書の見出しになる形です。

ます形:「~ます」で終わる形です。

連用形:ます形から「ます」をとった形です。
( 食べます → 食べ )

ない形:普通形の非過去の否定の形です。

た形:普通形の過去の肯定の形です。

て形:た形の「」を「」に変えた形です。
( 食べ → 食べて )

6.様々な活用形の呼び方:動詞

テキストによっては、
いろいろな活用形の呼び方を使っています。
テキストによって、使う名称が
微妙に違ったりします。

それは、
活用形の呼び方には
統一された名称があるわけではないからです。

以下が、よく見られる活用形の名称です。

「意向形」(食べよう・書こう・しよう)
「命令形」(食べろ・書け・しろ)
「条件形」(食べれば・書けば・すれば)
「ば形」(食べれば・書けば・すれば)
「可能形」(食べられる・書ける・できる)
「受け身形」(食べられる・書かれる・される)
「尊敬形」(食べられる・書かれる・される)
「使役形」(食べさせる・書かせる・させる)
「たり形」(食べたり・書いたり・させたり)
「たら形」(食べたら・書いたら・したら)
「禁止形」(食べるな・書くな・するな)

上記を見てわかるように、
「条件形」と「ば形」は同じ活用ですが、
テキストによって、呼び方が違っています。

学習者にとって、わかりやすいようにと、
意向形を「う・よう形」
受身形を「れる・られる形」
使役形を「せる・させる形」
と、表記しているテキストもあります。

また、動詞の場合、
辞書形」のことを、
基本形」「る形」と呼んでいる
テキストも多いようです。

つまり、動詞では
辞書形が基本の形だということでしょう。

注意しておきたいのは
ナ形容詞と名詞
「辞書形」と「基本形」の形が違います

学習者が混乱しないように、
活用を教えるときには、
その名称も丁寧に確認しておきましょう。

7.よく使われる活用形の呼び方:
イ形容詞・ナ形容詞

辞書形 基本形 連体形 て形
イ形容詞 高い 高い 高い 高くて
ナ形容詞 静か 静かだ 静かな 静かで

 

た形 連用形 条件形 否定形
イ形容詞 高かった 高く 高ければ 高くない
ナ形容詞 静かだった 静かに 静かなら(ば) 静かじゃない

8.よく使われる活用形の呼び方:名詞

辞書形 基本形 て形
名詞 学生 学生だ 学生で

 

た形 条件形 否定形
名詞 学生だった 学生なら(ば) 学生じゃない

 

 

ではではニゴでした。

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