「~ために」(2)原因・理由を表す
「~ために」の表現は、次の二つの意味・用法があります。
(1)目的を表す
(2)原因・理由を表す
今回は
(2)原因・理由を表す「~ために」を見ていきましょう。
1、原因・理由の「~ために」:接続
前回の目的の「~ために」」では、主に
・動詞の辞書形 + ために、
・(名詞+の) + ために、
の二つの形に接続しましたが、
今回の原因・理由の「~ために」は
動詞、名詞、イ形容詞、ナ形容詞全てが接続可能です。
動 詞 :人身事故が起こったために、電車が遅れている。
名 詞 :事故のために、ダイヤが乱れている。
イ 形 :忙しかったために、飲み会に参加できなかった。
ナ 形 :英語が下手なために、外国の人を見ると逃げたくなる。
一般的には、主に
「動詞た形+ために」「名詞の+ために」
が使われます。
●「~ために」の「に」は、
書き言葉や硬い文体で使う場合、省略されますが、基本的な
意味は変わりません。
以下は硬い例文ですので、「~ため」を使います。
①動詞た形 + ため(に)
台風が上陸したため、東北では被害が拡大した。
②動詞辞書形 + ため(に)
まもなく台風が上陸するため、天気は急速に悪化するだろう。
③名詞の + ため(に)
人身事故のため、ダイヤが大幅に乱れている。
上記の例①例②をみると、
「動詞のた形・辞書形」の両方が使えることがわかります
どうして原因・理由の「~ために」は
辞書形(非過去)にも、た形(過去)にも接続するのか
<復習:目的の「~ために」>
目的の「~ために」は「動詞のた形」には接続しません。
「動詞辞書形(非過去)+ために」となります。
(例1)絵の勉強をするために、フランスの大学に留学します。
目的の「~ために」が、
辞書形(非過去)に接続する理由は以下の通りです。
【フランスの大学に留学するときに、
その目的である「絵の勉強をする」ということは
まだ、当然、実現していません。
つまり、
前件の「絵の勉強をする」と
後件の「フランスの大学に留学する」との
時間的な前後関係は決まっています。
まず、「絵の勉強をする」という目的を持ち、
次に、その目的を実現するために、
「フランスに留学する」という順番になります。
そこで、
目的の「~ために」の前に接続する動詞は
非過去しかとることができません。
(例2)引っ越し(〇する/✖した)ために、少しずつ部屋を片付けています。
<原因・理由の「~ために」>
(例1)雨が降ったために、試合は中止になった。
「原因・理由のために」の時間的な前後関係を考えてみます。
まず、「原因・理由」である前件の文が生じ、
次に、後件の「結果」が起こることになります。
そこで、
前件の文が後件の文より、時間的に先であれば、
前件の動詞は
「辞書形」でも、「た形」でも、「現在の状態」を表していても、
OKです。
(例2)ここはよく地震がおこるために、旅行客からは敬遠されている。
(例3)巨大地震がおこったために、この建物は崩壊した。
(例4)地面がゆれているために、歩けない。
「現在の状態」でもOKということは、状態ををあらわす
イ形容詞、ナ形容詞、動詞「ある」とも
一緒につかえるということです。
(例4)国土が狭いために、大規模農業には適していない。
(例5)この辺りは駅に近く、便利なために、人口が増えている。
(例6)試験があるために、遊ぶ時間が取れなくなっている。
2、原因・理由の「~ために」:意味
「~ために」は前文・後文の因果関係(原因・理由と結果)を表します。
(例1)雪が降ったために、電車が止まった。
(例2)雪のために、 電車が止まった。
(例3)きのう大雨が降ったために、道路が冠水しています。
. . (原因) (結果)
(例4)バスが遅れたために、遅刻しました。
. . (理由) (結果)
●「~ため(に)」は、硬い文体で使われることが多く、
客観的な事実を伝える新聞などでよく見かけます。
会話には、ほとんど現れません。
「~ため(に)」は事実関係を論理時に述べる時に使うため、
(例1)日照不足のため、作物の成長が遅れている。
後件の文に、意志表現は表れにくいと言えます。
(例2)×大雨のために、今日の遠足は中止でしょう。(判断)
(例3)×大雨のために、傘を持っていきなさい。(命令)
(例4)×熱が出たために、学校を休ませてください。(依頼)
(例5)×熱が出たために、学校を休もうと思う。(意志)
上記の通り、後件文に、
判断、命令、依頼、意志などの表現は使いにくいのですが、
公共のお知らせやアナウンスなど、改まった場面では、
依頼表現が使われることがあります。
(例6)浅間山は噴火する恐れがあるため、入山しないでください。
(例7)インフルエンザにかかってしまったため、
しばらくの間、休ませてください。
●「~ために」は悪い結果になってしまったときに、多く使います。
(例6)数学の点数が悪かったために、合格できなかった。
(例7)火山が爆発したため、住民は避難しなければならなかった。
3、原因・理由の「~ために」:その他のポイント
●前件の文の主格は、「が」をとります。
(例1)親が来たために、夜、遊びに行けなかった。
●前件の文と後件の文の動作主が、違っていてもかまいません。
(例1)子供が熱を出したために、仕事を休んだ。
前件の文の動作主:子供
後件の文の動作主:わたし
「~ために」表現の目的をご覧になりたい方は
こちらをクリックしてください。
>>「~ために」の表現(1)目的
ではでは ニゴでした。