「~ために」(1)目的を表す
「~ために」表現には
(1)目的
(2)原因・理由
の二つがあります。
ここでは(1)の目的を見ていきます。
目的を意味する表現は「~ために」のほかにも、
「~しに」「~のに」「~ように」などがあります。
(例)コンビニへコピーをしに行った。
(例)これは、野菜の皮をむくのに使います。
(例)子供が食べられるように、小さく切ってください。
しかしながら、
目的という言葉を聞いて、まず、頭に思い浮かぶのは
「~ために」でしょう。
例えば
『オリンピックで優勝するために、練習する。』
のように、「~ために」は
はっきりとした目標を掲げ、
それを目指して行動する、そんな時に使います。
1、目的の「~ために」:接続
●接続する形としては、
「①動詞の辞書形 + ために、 ②(名詞+の)+ ために」
が使われます。
①動詞辞書形 + ために:車を買うために、貯金しています。
②名詞の + ために:就職活動のために、黒いスーツを買おうと思う。
どうして目的の「~ために」は辞書形(非過去)に接続するのか
どうして「~ために」の前の動詞の形を考えるのか、不思議に思った方もいるかと思います。【動詞の辞書形(非過去)「~する」+ために】
それは、「~ために」には、原因・理由を表す用法もあるからです。
原因・理由の「~ために」は、主に動詞のた形(過去)に接続します。
その対比として考えてみよう、ということです。
<原因・理由を表す「~ために」の例>
(例)雨が「降った」ために、試合は中止となった。
目的の「~ために」: 辞書形(非過去)+ために、
理由の「~ために」: た 形(過 去)+ために、
では、(例1)を見てください。
(例1)絵の勉強をするために、フランスの大学に留学します。
フランスの大学に留学するときに、
その目的である「絵の勉強をする」ということは
まだ、当然、実現していません。
つまり、
前件の「絵の勉強をする」と
後件の「フランスの大学に留学する」との
時間的な前後関係は決まっています。
まず、「絵の勉強をする」という目的を持ち、
次に、その目的を実現するために、
「フランスに留学する」という順番になります。
前の文(時間的に先)ために、 → 後ろの文(時間的にあと)
また、前件の動詞が目的になるわけですから、
その行為をすでに「やってしまっていたら」、目的にならないのです。
そこで、
目的の「~ために」に接続する動詞は
非過去しかとることができません。
(例2)引っ越し(〇する/✖した)ために、少しずつ部屋を片付けています。
2、目的の「~ために」:意味
●大学に入るために、勉強しています。
前文 ために、 後文 。
- 前件の文は、話し手の目的、
後件の文は、その目的を実現するための行為・手立てを表します。
(例1)A:医者になるために、B:医科大学を受験する。
A:自分の意志により実現したいと思っている目的
B:その目的(A)を実現するための行為
(例2)A:海外旅行をするために、B:パスポートをとる。
A:話し手の目的
B:それ(A)を実現するための、手立て
目的の「~ために」:ポイント
●上記の例文を見てもわかる通り、
「~ために」は
話し手の目的を表すので、意志的な動詞を用います。
●前件の文と後件の文の主語は、同一人物です。
(例4)学費を払うために、アルバイトをしています。
学費を払う人 = わたし
アルバイトをする人 = わたし
●目的を表す「~ために」は、
原因・理由の「~ために」とは違って、
後件の文に、意志表現を使います。
そこで、
後件の文には、
「~てください」「~ています」
「~たほうがいいです」「~なければなりません」
など、
いろいろな表現が使えます。
(例4)病気を治すために、薬を飲まなければならない。
(例5)安全のために、シートベルトをしてください。
(例6)いい写真を撮るために、一眼レフを買おうと思っています。
●ただし、意志表現ではありませんが、「ある」「必要だ」なども使えます。
(例7)保健室は、体調の悪い人が休むためにあるのです。
さぼる人のためにあるのではありません。
(例8)IT技術の導入こそが、わが社の発展のためには必要です。
●「~ために」の「に」は、
書き言葉や硬い文体で使う場合、省略されることもあります。
しかし、意味は変わりません。
(例9)試験に合格するため、勉学にいそしむ。
目的の「~ために」ポイントのまとめ
A:コンクールに優勝するために、B:一日8時間以上ピアノを弾く。
*A=B(AとBは、同一人物)
*A、Bには、意志動詞を多く使う。
3、用途を表す「~ために」
用途を表します。(目的の中に含めることもできます)
(例1)この大きなはさみは 枝を切るために使います。
(例2)この箸は かき混ぜるために使います。
(例3)このメガネは パソコンから目を守るためにかけます。
4、「名詞の + ために」恩恵・利益・貢献
「名詞の + ために」の名詞が人や組織の場合、
「名詞の利益のために」
「名詞に恩恵を与えるために」
「名詞に貢献するために」
といった、意味にもなります。
(例1)恋人のために、婚約指輪を買う。
(例2)父は家族のために、毎日働いています。
(例3)会社のために、この秘密は絶対に守ります。
(例4)国のために、海外でITの技術を磨きたい。
5、目的の「~ために」そのほかの形
(1)「(~のは)~ためだ」
「~ために」は
①「(~するのは)~動詞辞書形+ためです」
②「(~するのは)~名詞+の+ためです」
という形で、使うこともあります。
(例1)頑張ってアルバイトをするのは 留学するお金を貯めるためです。
(例2)毎日一万歩、歩くのは 健康のためです。
(2)連体修飾
「~ために」は
<「動詞辞書形」+ための「名詞」>の形で
連体修飾としても使えます。
(例1)日本語教師になるための勉強をしています。
●「~ために」の原因・理由の意味用法は こちらをご覧ください。
>>「~ために」表現(2)原因・理由
●「~ために」表現の注意すべき点は、こちらをご覧ください。
>>「~ために」表現(3)目的の注意点
ではでは ニゴでした。