「~ている」表現(6)結果の状態(属性・様子・形状)
「~ている形」結果の状態(属性・様子・形状)
まず、「~ている形」の簡単な復習をしてみましょう。
「~ている形」は、アスペクトの中の代表的な文法項目です。
アスペクト(時間の流れに焦点をあてる)
一つの動作を考えるとき、その動作は
(1)開始前か、
(2)その動作をしている最中か、
(3)終了したところか、
(4)終了した後の状態か、など
いろいろな段階が考えられます。
日本語では、その動作が今、どの段階にあるのかを
いろいろな文法形式を使って表します。
この文法形式のことをアスペクトと言います。
例を挙げてみます。
*その動作をしている最中(進行中)
A:マリさんはどこにいますか?
B:あそこで、コーヒーを飲んでいますよ。
*終了した後の状態(結果の状態)
このコピー機は、故障していますから、使えません。
(コピー機は変化(故障)した結果、その状態が残っています)
「~ている形」は、上記のように
動詞の動きがどの段階(局面)にあるのかを示しています。
しかしながら、以下の「~ている形」は、どうでしょうか。
(2)脱獄しようとしている太郎を、あざ笑うかのように
刑務所の塀は高くそびえているのだった。
この動詞の「~ている形」
「曲がっている」「そびえている」は、
動きの段階(局面)を表しているとは、考えにくいですね。
この「~ている形」は動詞ではありますが、「形容詞」と同じように
きゅうりや塀の様子・状態を表していると言えます。
形容詞の役目は物や人の様子・性質を表わすことでした。
・この肉は やわらかいですねえ。
「曲がっている」「そびえている」は、
「高い」「やわらかい」と同じように形容詞の働きをしています。
「曲がっている」「そびえている」は、
動詞ではありますが、動きの段階を表していません。
そこで、アスペクトには、分類できないのです。
しかし、
この「~ている形」が同じアスペクトのグループではないからと言って、
違う文法項目のところで扱っては、わかりにくくなります。
そこで、ここでは、
属性・様子・形状を表す「~ている表現」として、
名前もわかりやすく、形容詞的用法として、お伝えしていきます。
「~ている表現」(6)形容詞的用法その一
あの人は背が高い。(形容詞)
あの人はやせている。(動詞の~ている形)
「やせている」は、動詞ですが、
その人がどんな様子なのかを表す、形容詞と同じ働きをしています。
そこで、この「やせている」のような動詞の「~ている形」を
結果の状態の一分類とし、「形容詞的用法」とします。
形容詞の働き
このかばんは安いけど、やはり、ブランド品の方は高いですね。
このりんごはとても甘いけど、こっちのりんごはすっぱいなあ。
形容詞の典型的用法は
「同じ種類のものの、さまざな特徴を描く」ということです。
りんご⇒ 甘い、すっぱい、丸い、赤い・・・・・・
あの人⇒ 背が高い、足が長い、やせている・・・・・・
ここでは、「やせている」だけが動詞ですが、同じ働きをしているので、
形容詞として、扱う方がわかりやすいと言えます。
形容詞
形容詞は、形容詞同士で、反対の意味を表せます。
しかし、中には、一方は形容詞で、その対義語は
動詞の「~ている形」の場合があります。
正しくない ⇔ あっている
若い ⇔ 年をとっている
まっすぐな ⇔ 曲がっている、傾いている
元気な ⇔ 疲れている
これを見ても、動詞の「~ている形」は
形容詞の役割を果たしていると考えられます。
「~ている表現」(6)形容詞的用法その二
金田一春彦氏は
動詞は、「~ている形」にすると意味が異なる
ということに着目しました。
そこで、動詞をアスペクトの観点から4種類に分類しています。
金田一春彦氏の動詞の分類
(1)状態動詞:状態を表す。「~ている」の形にならない。
(2)継続動詞:ある時間内続いて行われる種類の動作、作用を表す。
「~ている」の形になり、
「動作の進行中」であることを表す。
(3)瞬間動詞:瞬間に終わってしまう動作、作用を表す。
「~ている」の形になり、動作、作用が終わって、
「その結果が残っている」ことを表す。
(4)第四種の動詞:時間の観念を含まず、形容詞のように
その物事の様子、性質、形状、印象を表す。
常に「~ている」の形で用いられる。
この動詞の分類について、
詳しく知りたい時は以下をクリックしてください。
https://www.tomojuku.com/blog/verb/
(4)第四種の動詞
金田一春彦氏のいう「第4種の動詞」とは、
必ず「~ている形」の形で使われる動詞のことです。
以下に例を挙げます。
(×)彼の100メートル走の記録は ずばぬける。
上記の例からもわかるように
「第4種の動詞」とは、形容詞の役割を担う動詞ともいえます。
あのカフェは しゃれていますね。(×)しゃれる
この話は あまりにも ばかげている。(×)ばかげる
犬の嗅覚はかなり すぐれていると思う。(×)すぐれる
このデザインは ありふれている。(×)ありふれる
「第4種の動詞」は
「~ている表現」(6)形容詞的用法に使う動詞でもあります。
「~ている表現」(6)形容詞的用法の注意点
形容詞的な働きをする、動詞の「~ている形」は
名詞を修飾するときには 形を変えます。
「曲がっている」→「曲がった」
「~ている形」で、名詞を修飾することもできますが、
「~した」の形にするのが基本です。
(?)イルカはすぐれている聴覚を持っている。
ただし、「そびえる」は、
「~する形、~している形、~した形」 全てが例外的に使えます。
窓の外に( そびえる / そびえている / そびえた )富士山。
「~ている表現」(6)形容詞的用法の分類
この表現は中級で学びますが、ここに書いておきます。
(1)「~としている」という形で様子を表す。
(例)彼はいつも堂々としている。
(悠々と、ひょうひょうと、淡々と、憤然と、
超然と、騒然と、きちんと・・・・・・)
(2)「擬態語(擬音語) + ~している」という形で様子を表す
(例)このラーメン、あっさりしていますね。
(例)田中さんの机の上は いつも ごちゃごちゃしている。
(ざらざら、つるつる、こりこり、ひんやり、のびのび、でこぼこ・・・・・・)
(3)形容詞+(色、様子、顔、顔色・・・)をしている。
(例)彼は まっさおな顔色をしてる。どうしたのだろう。
(例)このフランス人形は 青い目をしている。
(例)このトナカイのぬいぐるみは 赤い鼻をしている。
「~ている表現」(6)形容詞的用法の導入方法
こうした、動詞の「~ている表現」は、働きとしては形容詞と同じです。
ということは、導入する際は
よく使う表現のみを、ピックアップし、
語彙(形容詞)として、導入した方がわかりやすくなります。
次回は
中級で学ぶ「~ている形」、経歴(経験)
の用法についてみていきます。
●「~ている」表現(7)経歴(経験)
https://www.tomojuku.com/blog/teiru7/
ではではニゴでした。