て形の意味・用法(その2)

「て形」の意味・用法(その2)

前回は「て形」の全体像について
見ていきました。
前回の記事を読みたい方は
以下をクリックしてください。
「て形」の意味・用法(その1)


●「て形」の基本的役割

「Aて、B」のように、
「単文と単文をつなぎ、複分を作る」ことです。

て形」は、
(1)付帯状況
(2)継起
(3)原因・理由
(4)並列
この四つが主な用法となります。

「て形」四つの用法の例文

(1)マリさんは傘を持って、出かけました。(付帯状況

(2)マリさんは事務室に行って、コピーをしてもらいました。(継起

(3)マリさんは風邪をひいて、学校を休みました。(原因・理由

(4)日曜日、キムさんは映画を見に行って
・・・・ロンさんはショッピングに行きました。(並列

「て形」は 
●付帯状況
●継起
●原因・理由
●並列
この四つが基本的な意味・用法ですが、
他にも様々な意味・用法があります。

「て形」他の用法の例文

(5)京都は冬は寒くて、夏は暑い。(対比

(6)紙袋を使って、整理箱を作った。(手段

(7)問題が一つあって、私は日本語がよくわからないのです。(前触れ

(8)知っていて、言わないなんて、ひどい人ね。(逆説

(9)このチームは トムさんをいれて、11人です。(順接条件

ここでは9つの用法を例示しました。
どうして、こんなにも用法が多いのでしょうか?

(注)「て形」の分け方には、研究者によって諸説あります。

「て形」には、どうして多くの用法があるのか?

前回の記事にも書いたように、
「て形」
それ自体には意味がありません

前件の文と後件の文が揃って、
初めて
「ああ、このて形は、この意味・用法だな」
と、判断できるのです。

つまり
て形」は
自分自身が意味を持たないために、
「Aて、B」のA、Bに
どんな言葉がはいるかによって、
意味が枝分かれし、
機能が増えていきます。

そこで、
どうしても用法が
多くなってしまうのです。

では、次に
この「て形」の意味・用法に
どんな注意点があるのかを、見ていきます。

「て形」の注意点(3点)

1.前件文(従属節)と後件文(主節)の主体(主語)

まずは
て形」の主体(主語)について考えます。

●付帯状況・手段の「て形」の主体(主語)

(例1)一晩中、
・・・温度は下がらないという予報だったので、
・・・クーラーをつけて、寝た。(付帯状況)

(例2)夏休みの工作として、
牛乳パックを使って、ロボットを作った。(手段)

上記の例をみてもわかるように、
付帯状況・手段を表す「て形」の
前件・後件の主体(主語)は同じです。

つまり、
(例1)だったら
本人がクーラーをつけて、
・・・・・・・・本人が寝ています。

●原因・理由や並列の「て形」の主体(主語)

(例1)多くの人がコロナにかかって
・・・社会が混乱した。(原因・理由)

(例2)おじいさんは山へ行って
・・・おばあさんは川へ行った。(並列)

上記の例のように
原因・理由や並列を表す「て形」では
前件・後件で違う主体(主語)
たてることができます。

(例2)だったら、
・・・前件の主体(主語)がおじいさんで、
・・・後件の主体(主語)がおばあさんとなります。

「て形」の用法によって
前件文、後件文にたつ主体(主語)が
違うことがわかりました。
では、
次の注意点を見ていきます。

2.話し手が丁寧に話したいときの「て形」

丁寧に話したいとき、
「並列」や「原因・理由」の「て形」は
主節(後件文)を丁寧にするだけでなく、
従属節(前件文)も丁寧にすることがあります。

(例1)田中先生は韓国の分校へ転勤となりまして
佐藤先生は台湾の分校へ行かれました。(並列)
・・・
(例2)事情がありまして
・・明日は休ませていただきます。(原因・理由)

基本的に
丁寧に言いたいときには
主節(後件文)の述語を丁寧形にします。

以前は
従属節(前件)の「て形」を丁寧形にするのは
「並列」と「原因・理由」の「て形」だけでした。

ところが、
最近では言葉遣いを丁寧にしたいという人が
増えてきており、

これまでは
丁寧形にしていなかった
「継起」「付帯状況」でも
て形」を丁寧形にして
使う例が散見されるようになりました。

(例1)(駅のアナウンス)

この電車は特急ですので、有楽町駅には止まりません。
有楽町へいらっしゃるお客様は、
このホームを降りまして
隣の2番線ホームへ移動してください。(継起)

(例2)
上司:田中さん、明日は昇進のための面接だね。
部下:はい。みょうにちは、いつもの服装ではなく、
・・・黒いスーツを着まして、臨みたいと考えております。
・・・

3.原因・理由の注意点

①「て形」の原因・理由はやわらかい表現!?

(例1)足首をねんざして、歩けない。

(例2)毎晩蒸し暑くて、よく寝付けない。

(例3)お会いできて、とても光栄です。

(例4)ワンコを飼うことができて
・・・・・・・・毎日がとっても楽しい!

上記の例文を見てください。
前件の「て形」の文は、
本当に
原因・理由を表しているのでしょうか?

(例1)歩けない原因は:ねんざ

(例2)寝付けない理由は:蒸し暑さ

(例3)光栄に感じる理由は:
・・・・・・・・・・・・会えたから

(例4)毎日楽しい理由は:犬

 

(例1)、(例2)は
原因・理由と言えます。

以下の(例3)(例4)は、
はっきりとした原因・理由
言えるでしょうか。

(例3)お会いできて、とても光栄です。

(例4)ワンコを飼うことができて
・・・・・・・・毎日がとっても楽しい!

(例3)は
会うことができて、その結果、光栄に感じている、

(例4)は
ワンコが飼えた、その結果、毎日が楽しい、

のように、
解釈する方が自然で、
バリバリの原因・理由ではなく、
ゆるい因果関係となっています。

つまり、
上記の(例3)(例4)、
以下の(例1)(例2)の
「 ~(前件) て、 (後件) ~ 」
は、
前件が生じたことによって
結果的に後件の状態になる
ということを表しています。

(例1)お会いできてうれしいです

(例2)彼と別れて、とてもつらかった

(例3)(例4)(例1)(例2)
を見てもわかるように、
光栄です」「楽しい」「うれしい」「つらい
といった
話し手の気持ちを表す場合は、
「て形」を使う、とも言えます。

こうした
「て形」(原因・理由の「て形」)は、
話し手の気持ちを表すので、
後件文には、
●形容詞などの状態を表すものがきたり、
●動詞でも無意志動詞が使われます。

参考:「て形」を使った断り方

私たちの学校では
最初の2週間で、
学習者は
日本で、
自力で
生活が営めるように、
サバイバル日本語を学びます。

その中に、
「友人を誘う」という課があります。

(例)
ジム:アンさん、今度の日曜日、
・・・・・一緒に図書館で勉強しませんか?
アン:すみません、今度の日曜日は
・・・・・ちょっと、用事があって・・・

この課で、
「誘いを受ける」
「誘いを断る」の両方を学びます。

その断り方として、「て形」を使います。

日本人は
「用事があるので、行けません」
のように、
はっきりとした理由を述べて
断ることはしません。

て形を使って、ふんわりと断ります。

これからもわかるように、
「て形」の原因・理由
「~ので」「~から」のように
はっきりしたものではなく、

結果的に、原因や理由になっていた、
という表現となります。

次回は
て形」の付帯状況や継起について
もう少し詳しく見ていきます。

 

前回の記事
「て形」の意味・用法(その1)

 

 

ではではニゴでした。

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