「て形」の意味・用法(その4)
「て形」(~て、~)の意味・用法(復習)
●て形の基本的役割は
「単文と単文をつなぎ、複分を作る」
ことです。
●て形の意味・用法は
前後の文脈によって決まります。
つまり、
「て形」の意味・用法は前後の文脈で、
・分類します。
●「て形」の主な意味・用法は
・以下の4つです。
(1)付帯状況
(2)継起
(3)原因・理由
(4)並列
ここでは
「て形」の「並列」について
見ていきましょう。
「て形」の並列
「並列」とは
複数の出来事を並べて示す
表現のことです。
前件の文と後件の文では
重要度に違いはありません。
(例1)
おじいさんが山へ行って、
おばあさんが川へ行った。
「て形」の「並列」の場合、
動詞だけではなく、
●形容詞
●名詞+だ
の用法もあります。
形容詞の「て形」の並列
(例1)この犬は大きくて、毛が長い。
(例2)この公園は広くて、新しい。
(例3)アンさんは目が青くて、髪が長い。
(例1)~(例3)は
たまたま、
前件と後件の主体(主格)が同じ人・物です。
ですが、
前件と後件とが違う主体(主格)の場合もあります。
(例4)アンさんは目が青くて、
・・・・ジムさんは目が茶色い。
「並列」の場合、
重要度に差がないので、
前件と後件を入れ替えることができます。
(例1)この犬は大きくて、毛が長い。
・・・・・・・・・・↓
(例1’)この犬は毛が長くて、大きい。
(例2)この公園は広くて、新しい。
・・・・・・・・・・↓
(例2’)この公園は新しくて、広い。
(例3)アンさんは目が青くて、髪が長い。
・・・・・・・・・・↓
(例3’)アンさんは髪が長くて、目が青い。
ですが、
以下の例文はどうでしょうか?
(例4)このりんごは甘くて、おいしい。
・・・・・・・・・・↓
(例4’)このりんごはおいしくて、甘い。
(例4’)は
少し違和感がありませんか。
(例4)の文は、
どうして
入れ替えないほうがいいのでしょうか?
「て形」(前件文)は
主節(後件)の文を修飾する
働きを担っています。
修飾するということは
意味的に
「何かの説明を加えている」
ということです。
そこで、
●このりんごは「甘くて、おいしい」
という文は、
「甘い」ことが「おいしい」ことの
説明となり、
それで「理由かな」と
感じやすくなるのです。
つまり、
「このりんごは甘くて、おいしい」
という語順の方が、
しっくりきます。
また、
日本語は
最後の方に大事なことを言う、
という特徴があります。
「おいしい」という形容詞は
評価を表しています。
「このリンゴはおいしい」
という文は
話し手がこのリンゴに対して、
「おいしい」という
判断を下しているのです。
話者の評価や判断は文の要です。
そこで、
そうした意味合いを持つ語は、
文の最後に置く方が、
日本語として自然です。
こうした理由から、
●このりんごは「甘くて、おいしい」
という文は
●このりんごは「おいしくて、甘い」
のように、
入れ替えないほうが
日本語として
自然な文となります。
では、
次の例文はどうでしょうか?
(例5)日本語は面白くて、難しい。
語順を入れ替えてみます。
(例5’)日本語は難しくて、面白い。
この場合、
どちらの文も不自然です。
手直しをするとすれば、
(例5”)日本語は難しいですが、面白いです。
あるいは
(例5”)日本語は面白いですが、難しいです。
となります。
この「面白い」と「難しい」」は
どちらとも、
話者の判断・評価を表す語です。
そして、
「面白い」と「難しい」という評価は
前者にはプラス(+)イメージが、
後者には̠̠マイナス(-)イメージがあります。
「て形」の「並列」は
意味的に「プラス(+)」と「プラス(+)」
・・・ 「マイナス(-)」と「マイナス(-)」
をつなげます。
例えば
以下のようになります。
●この梨は 甘くて(+)、みずみずしい(+)。
●日本語は 難しくて(-)、複雑だ(-)。
評価が
プラス(+)とマイナス(-)に
分かれる場合は、
「が」や「けれども」などを使います。
「名詞+だ」の「て形」の並列
(例1)
日本の首都は東京で、
フランスの首都はパリだ。
(例2)
アンさんはフランス人で、
ジムさんはイギリス人だ。
(例1)と(例2)は
主体が違いますが、
同じ主体で文を作ることもできます。
(例3)大谷翔平選手は
ピッチャーで、4番打者だ。
「て形」と「中止形」
従属節(前件文)の「て形」は
述語が動詞かイ形容詞の場合、
「中止形」にすることができます。
述語が動詞の場合の中止形
(例1):「て形」
●段ボールを使って、ロボットを作った。
(例2):「中止形」
●段ボールを使い、ロボットを作った。
述語がイ形容詞の場合の中止形
(例1):「て形」
●この公園は広くて、緑が多い。
(例2):「中止形」
●この公園は広く、緑が多い。
「て形」と「中止形」の違い
意味的に差は
あまりありませんが、
「中止形」の方が書き言葉的です。
「中止形」は
「並列」だけでなく、
他の用法でも使えます。
(例1)
●英語を使い、小説を書いた。(付帯状況)
(例2)
●会社に戻り、確認する。(継起)
(例3)
●孫が生まれ、家がにぎやかになった。(原因・理由)
次回は
「て形」の意味・用法の「否定形」について、
解説していきます。
今までの「て形」の意味・用法
ではではニゴでした。