「て形」の意味・用法/否定(~ないで、~なくて、~ずに)(その5)
今回は
「て形」の否定文について考えます。
否定文を見ていく前に、
まずは、
「て形」肯定文の主な意味・用法を
復習しましょう。
復習の要らない方は飛ばしてくださいね。
「て形」肯定の意味・用法(復習)
●て形の基本的役割は
「単文と単文をつなぎ、複分を作る」
ことです。(~て、~)
●て形の意味・用法は
前後の文脈によって決まります。
つまり、
「て形」の意味・用法は前後の文脈で、
・分類します。
●「て形」肯定の主な意味・用法は
・以下の4つです。
(1)付帯状況
(2)継起
(3)原因・理由
(4)並列
「て形」の肯定、4つの意味・用法の例文
(1)マリさんは傘を持って、出かけました。(付帯状況)
(2)マリさんは事務室に行って、コピーをしてもらいました。(継起)
(3)マリさんは風邪をひいて、学校を休みました。(原因・理由)
(4)日曜日、キムさんは映画を見に行って、
・・・・ロンさんはショッピングに行きました。(並列)
ここまでは
「て形」肯定文の主な意味・用法を確認しました。
では、いよいよ
「て形」の否定形について見ていきましょう。
「て形」の否定形の特徴
動詞「て形」の否定形は以下の三つです。
「~ないで」「~なくて」「~ずに」
否定形の特徴1.書き言葉と話し言葉
●「~ないで」「~なくて」は
話し言葉にも、書き言葉にも使われます。
●「~ずに」は
主に書き言葉で使われます。
否定形の特徴2.「~ないで」「~なくて」「~ずに」は
動詞、形容詞、名詞、どの言葉とつながるのか?
●動詞は
「~ないで」「~なくて」「~ずに」
の3つの形をすべて使うことができます。
●「~ずに」は動詞にしか使えません。
●イ形容詞、ナ形容詞、名詞述語の否定形は
「~なくて」を使います。
「~ないで」「~ずに」は使えません。
言葉では少しわかりにくいので、
図にしてみます。
~ないで | ~なくて | ~ずに | |
動 詞 | 〇 | 〇 | 〇 |
イ 形 | × | 〇 | × |
ナ 形 | × | 〇 | × |
名 詞 | × | 〇 | × |
図にすると一目瞭然です。
イ形容詞、ナ形容詞、名詞は
「~なくて」の形しか使えません。
動詞だけが、
「~ないで」「~なくて」「~ずに」の
全ての形を使えます。
そこで、
どう使い分けるのか、という場合、
動詞のみで考えればいいことになります。
では、
動詞、イ形容詞、ナ形容詞、名詞、全てで使える
「~なくて」の例文を見ていきます。
「~なくて」の例文
●動詞の例
(例)キムさん家に行くとき、
・・・・・道がわからなくて、困りました。
●イ形容詞の例
(例)あの映画は
・・・おもしろくなくて、途中で寝てしまった。
●ナ形容詞の例
(例)早起きが得意ではなくて、
・・・・・・・・・たまに遅刻してしまう。
●「名詞+だ」の例
(例)アンさんは学生ではなくて、先生です。
次に、動詞にしか使えない
「~ないで」の例文を見てみましょう。
「~ないで」の例文
●「~ないで」は動詞にしか使えません。
(例)最初は辞書を使わないで、この文を読んでみてください。
「~ずに」の例文
●「~ずに」も動詞にしか使えません。
(例)弟は顔も洗わずに、出かけて行った。
以上、
どの品詞がどの否定形を使うのかは
わかりました。
次は、意味について考えます。
「て形」の否定形の意味
「て形」の肯定形には
主に4つの意味がありました。
「て形」の否定形は
●「て形」の肯定形の意味・用法を
・・担っている部分もあります。
ですが、基本的には
●少し角度を変えて意味を加え、
・表現方法を多様化させています。
つまり、
「て形」の肯定形を
単純に否定形にすることは
できません。
「て形」の否定形には
「て形」の否定形の
独自の意味機能があります。
「て形」の否定形が
「て形」の肯定形の持つ
意味・用法に
すべて対応することはできないのです。
それを確認するためにも、
「て形」の肯定形を
あまり、文をいじらずに、
「て形」の否定形にしてみます。
「て形」の肯定形を否定形にしてみる
否定形
①「~ないで」、②「~なくて」➂「~ずに」
の用例
(例1)付帯状況
●サングラスをして、運転した。
→〇サングラスをしないで、運転した。
→✖サングラスをしなくて、運転した。
→〇サングラスをせずに、運転した。
(例2)手段
●ハサミを使って、紙を切った。
→〇ハサミを使わないで、紙を切った。
→✖ハサミを使わなくて、紙を切った。
→〇ハサミを使わずに、紙を切った。
(例3)原因・理由
●国から手紙が来て、安心した。
→✖国から手紙が来ないで、心配だ。
→〇国から手紙が来なくて、心配だ。
→✖国から手紙が来ずに、心配だ。
(例4)並列
●アンさんは帰国して、
・ジョンさんは帰国しなかった。
→〇アンさんは帰国しないで、ジョンさんは帰国した。
→〇アンさんは帰国しなくて、ジョンさんは帰国した。
→〇アンさんは帰国せずに、ジョンさんは帰国した。
上記では
「て形」の肯定形を
多少言葉を変えて、否定形にしてみました。
これをみてもわかるように、
肯定形を単純に
否定形にはできません。
結論としては
学習者に「て形」の否定形を
教える場合、
「て形」の否定形とは
「て形」の肯定形とは
別物として伝えた方が
混乱を避けられるでしょう。
例文からわかる
「て形」の否定形の特徴
●継起、付帯状況の場合、
「~ないで」「~ずに」を使います。
(例)寝坊してしまったので、
・・・朝ごはんを食べないで(食べずに)、家を出た。
(例)背中を丸めないで(丸めずに)、歩きましょう。
●原因・理由の場合、「~なくて」を使います。
(例)雨が降らなくて、米が不作になってしまった。
(例)アメリカを旅行したとき
・・・英語が話せなくて、とても不便だった。
●並列(あるいは対比)の場合、
・「~なくて」「~ないで」「~ずに」
・すべてが使えます。
(天気予報では雪が降ると予測していたが)
(例)雪は降らないで、雨が降った。
(例)雪は降らなくて、雨が降った。
(例)雪は降らずに、雨が降った。
(例)兄は国へ帰らないで、弟が帰った。
(例)兄は国へ帰らなくて、弟が帰った。
(例)兄は国へ帰らずに、弟が帰った。
今回はここまでとします。
次は
「て形」の否定形の
(肯定形と比べるのではない)
意味・用法を見ていきます。
ではではニゴでした。