「て形」の意味・用法(その3)
「て形」(~て、~)の意味・用法(復習)
「て形」は、
(1)付帯状況
(2)継起
(3)原因・理由
(4)並列
この四つが主な用法となります。
て形・四つの用法の例文
(例1:付帯状況)
●マリさんは傘を持って、出かけました。
(例2:継起)
●マリさんは事務室に行って、コピーをしてもらいました。
(例3:原因・理由)
●マリさんは風邪をひいて、学校を休みました。
(例4:並列)
●日曜日、キムさんは映画を見に行って、
・・・ ロンさんはショッピングに行きました。
「て形」の4つの用法のうち、
付帯状況(例1)の「て形」は
学習者にとって
習得が難しいようです。
そこで、
ここでは
「て形」の「付帯状況」について、
その全体的な特徴を見ていきましょう。
付帯状況の細かい用法については
その次に述べていきます。
「て形」(付帯状況)の特徴
1.「付帯状況」の後ろの文の述語は
・・・意志的な動きを表す動詞が用いられます。
(例1)まぶしい時は サングラスをかけて、運転する。
2.「付帯状況」の前の文と後ろの文では
・・・主体(主語)が同じです。
(例2)選手団は胸を張って、
(選手団は)堂々と行進していた。
3.「付帯状況」の前の文と後ろの文の動きは
・・・ほぼ同じ時間で起こっています。
(例3)母は今日、あまりの忙しさに、
・・・・・・立って、ご飯を食べていた。
「付帯状況」を表す「て形」は
後ろの文が
どのような状況や、状態で
行われているのかを、
前文の「て形」で修飾し、説明する用法です。
そこで、
様々な意味・用法を持ちます。
これから、
「付帯状況」の四つの意味・用法について、
見ていきます。
「て形」の「付帯状況」4つの用法
1.「~たまま」と似た働きをする「付帯状況」
(例)黒のスーツを着て、入社式に臨みます。
「付帯状況」の特徴で述べた通り、
「付帯状況」の後ろの文の述語は
意志的な動きを表す動詞が用いられてます。
前件文の動詞は、
(例1)その人がどんな様子なのか、
・どんな姿勢なのかを表す動詞、
(例2)着脱の動詞
(例3)どんなものを携帯しているのかを表す動詞
が、よく使われます。
(例1)姿勢を表す動詞
●背筋を伸ばして、歩きます。
(例2)着脱の動詞
●曇っているのに、
・・サングラスをして、運転する。
(例3)携帯を表す動詞
●大きなリュックを背負って、歩いた。
この「付帯状況」の「て形」は、
前文で動きが起こり、その状態のままで、
後ろの文の動きが始まることを表します。
そこで
「~たまま」と似た働きをし、
置き換えられることもあります。
2.心理動詞を用いる付帯状況
「付帯状況」を表す「て形」は、
心理状態を表す動詞が
用いられることもあります。
(例1)
●私は喜んで、プロポーズを受け入れました。
(例2)
●彼は電話を切ると、
・あわてて、部屋から出て行った。
(例3)
●大谷翔平選手を応援しながら、
・興奮して、試合を見ていた。
ただし、
このような心理状態を表す動詞の「て形」は、
「原因・結果」の用法に多く見られます。
そこで、
(例)彼女はうんざりして、電話を切った。
上記のような例文は
「付帯状況」と「原因・結果」の
二つの解釈が可能です。
解釈①「付帯状況」
●彼女はうんざりして、電話を切った。
・・・・・↓
●彼女はうんざりしながら、電話を切った。
解釈②「原因・理由」
●彼女はうんざりして、電話を切った。
・・・・・↓
●彼女はうんざりしたので、電話を切った。
このことからも、
「て形」の意味・用法は
「文脈やその文が発話された時の状況」
によって、
決まることがわかります。
3.「~ながら」と似た働きをする付帯状況
前の文の動詞が動きを表す場合、
その「て形」の意味は、
まず、
「継起(時間的前後関係)」
と判断されます。
(例)念入りに歯を磨いて、ねる。(継起)
しかし、
その動きが継続的で、
「前の文が動きながら、そのまま同時に、後ろの文も動く」
といった
「~ながら」の意味をもつ場合、
「付帯状況」を表します。
このような「て形」動詞は、
「~ながら」と似た働きをしています。
(例1)手を大きく振って、行進した。
(例2)走って、家に帰った。
(例3)大きな声を出して、セリフを覚えた。
(例4)田中先生に教わって、漢字を書いた。
また、
以下の例文は
「付帯状況」と「継起」の
二つの解釈が可能です。
(例)子供たちは 落ち葉を集めて、遊んだ。
解釈①「付帯状況」
●子供たちは
・落ち葉を集めるということを
・遊びとしていた。
解釈②「継起」
●子供たちは
・落ち葉を集めてから、遊んだ。
4.手段を表す付帯状況
前の文と後ろの文が
ほぼ、同時に進行している文は、
「手段」や「方法」を表すこともあります。
(例1)バスに乗って、駅まで行きます。
(例2)今はパソコンを使って、
・・・・・いろいろなことを調べることができます。
以上、
「て形」の「付帯状況」の
様々な意味・用法を見てきました。
各用法は
他の用法にも解釈でき、
意味が連続していることがわかります。
簡単にまとめると、
「て形」の「付帯状況」は
前の文と後ろの文の
●主語と時間が一致している、
そして、
●前の文の「て形」が、後ろの文を修飾している、
と言えます。
次に、
比較的簡単だと思われる
「て形」の「継起」について見ていきます。
「て形」の「継起」の注意点
継起とは?
「継起(けいき)」とは、
聞きなれない言葉だと思いますが、
日本語文法の中では、よく出てきます。
「継起」という漢字を見てください。
これは、
前件の動作に継(つ)いで、
後件の動作が起こる、
と言う意味です。
つまり、
「継起」では
前件文と後件文の間に、
時間の前後関係が起こります。
前の文に続いて、次の文が起こります。
(例1)本屋さんに行って、辞書を買った。
割と習得しやすい「継起」ですが、
学習者の間違えやすいポイントを
いくつか書いておきます。
「て形」の「継起」
学習者の誤用が起きやすいポイント
●学習者が
以下のような
不自然な文を書いてきました。
一体、
どこがいけないのでしょうか?
(例1)
昨日は
公園に行って、友達とサッカーをして、
お昼ごはんを食べて、帰りました。
解説:
学習者は時に
「~て、~て、~て、~した。」
のように、
「て形」を使って、
文をいくつもつなげてしまうことがあります。
「~て」を
連続して使うのは
基本的には一回か二回です。
「~て」で文をつなげるときには
基本的には「一回」
多くても「二回」まで、と
伝えましょう。
●学習者の不自然な文
(例2)
本屋さんに行って、辞書を買って、
パンを食べました。
解説:
この例文では
「~て」を2回にとどめています。
しかし、
不自然な文です。
どうしてでしょう・・・?
「~て」(「継起」)は
続いて起こる出来事を
起こる順番につないでいきます。
「本屋さんに行って、辞書を買いました」
は、
時間的な順番も、意味も通っています。
ところが、
「辞書を買って、パンを食べました」
は、
時間的には、
この通りなのかもしれませんが、
前件文、後件文は
意味的に何のつながりもありません。
「~て」は
意味的なつながりのある文を
つなげるときに使います。
そこで、
本屋さんに行って、辞書を買いました。
それから、
マックに行って、ハンバーガーを食べました。
のように、
●時間的順番と
●前件文、後件文に意味的つながりがある
ということに、
注意してもらいましょう。
ちょっと長くなってしまったので、
また次回に。
ではではニゴでした。