~てください・その2

前回、参考書などでは
「~てください」=「丁寧な依頼」と記載されているが、
そこには大きな問題がある、ということをお伝えしました。

そして、
前回の「~てください」では
その用法を①「指示」②「依頼」③「勧め」の三つに分け、
その1では ①「指示」と②「依頼」 について見ていきました。
ここでは③「勧め」の用法について考えましょう。

*「~てください」その1は以下をご覧ください。

https://www.tomojuku.com/blog/tekudasai/

3.勧め

(例1)ゆっくりしていってください。

「勧め」は例1のように、
相手にゆっくりしていくことを、用法の言葉通り「勧める」場合に使います。

●では、問題です。
「座ってください」は、「指示」「勧め」のどちらに当たるでしょうか。

★「~てください」は
 どういう状況で、誰が誰に言うのかが、とても大切な表現です。
 以下の(例2)と(例3)は同じ表現でも、用法が違います。

教師が学生に
(例2)座ってください。

クラスメート同士で
(例3)キムさん、ここに座ってください。
    一緒にチョコレートを食べましょう。

答えは
(例2)が「指示」(例3)が「勧め」となります。

●「~てください」だけのシンプルな形では
「指示」になりやすと言えます。

「指示」:座ってください。

●前回「依頼」のときには
「すみませんが、~してください」のように、
「すみません」を付け足すと、学生にとって
わかりやすいだろうと、お伝えしました。

●「勧め」のときには
「どうぞ」という一言を添えると、
意味が格段に分かりやすくなります。

「勧め」:どうぞ、座ってください。

「指示」の場合、
言われた側は断ることができませんでした。

「依頼」の場合は
相手に頼んで、お願いしているわけですから、
言われた側は、もちろん、断ることができます。

「勧め」の場合も、

(例4)山田:キムさん、どうぞ、食べてみてください。
       これ、私が作ったクッキーなんです。

    キム:山田さん、ありがとう。でも、
       小麦アレルギーなので食べられないんです。

上記の例のように、言われた側は断ることができます。

 「~てください」の敬語形

形 : お + 動詞て形 +ください

(注:「~てください」の敬語形は上記の型だけではありません)

「勧め」の場合は、
敬語の形を使う状況が多くなります。

(例5)どうぞ、召し上がってください。

(例6)どうぞ、ご覧ください。

(例7)どうぞ、ご自由にお使いください。

(例8)どうぞ、ゆっくりお休みください。

「~てください」のその他の用法

「~てください」には
①「指示」②「依頼」③「勧め」
の三つの用法だけではありません。

例えば

(例1)応援する→頑張ってください。

(例2)配慮する→気を付けてください。

(例3)懇願する→助けてください。

などがあります。
(例1)の「頑張ってください」は
日本人がとてもよく使う表現です。語彙として早い段階で導入しましょう。

(例3)の「助けてください」は
災害があったときなどに、とても役に立つ表現です。
これも、早い段階に語彙として導入した方がいいと考えます。

また、
「やめてください」という表現は、
女性にとっては、使う場合があるかもしれません。
この一語を知っておくと役立つこともあるので、
伝えておいた方がいいかもしれません。

「~てください」の補足

「~てください」の授業では
「消しゴムを貸してください」といった例文を使うことがあります。
「貸してください」だけを学ぶのであれば問題ありません。

しかしながら、
「貸す」「借りる」「返す」
この三つの動詞は学習者にとって、なかなかの強敵です。
ここで、「借りる」について考えてみましょう。

「貸す」「借りる」「返す」

学生にとって、
「貸す」VS「返す」の二項対立だけだったとしたら、
さほど難しくないでしょう。

しかし、そこに「借りる」が加わると、混乱し始めます。

「~てください」の時には、
●「貸してください」のみか、
●「貸してください」と「返してください」の二つ

どちらかにしましょう。
「借りる」もついでにと、軽い気持ちで三つ一緒に行うと、
収拾がつかなくなります。

「貸してください」↔「返してください」

このことが理解でき、使えるようになってから、
別の単元で、「借りる」は導入しましょう。

借りる

(例)本を借りてください。

「借りる」という動詞は
その動作を聞き手に向けることができません。
わかりにくいので、具体例を挙げます。

山田さんが鈴木さんに向かって言います。

(例1)山田:鈴木さん、「週刊文春」を借りてください。

この場合、山田さんは鈴木さんから
直接、雑誌を借りるのではありません。
(日本人なら、すぐにわかることですが、
日本語学習者にはこの点がとても難しいようです)

山田さんは
鈴木さんが別の誰かから、雑誌を借りてきてください
と、言ってるのです。

山田さんが鈴木さんから雑誌を借りたい場合には、

(例2)鈴木さん、(鈴木さんの持っているその)
     「週刊文春」を貸してください。

あるいは「許可」を求める表現にして、

(例3)鈴木さん、(鈴木さんの持っているその)
     「週刊文春」をお借りできますか。

のように、しなければなりません。

また、「借りる」という動詞は
「借金」という言葉があるにもかかわらず、
「お金」(小銭ではありません)には、どうも使いにくいようです。

(✖)お金、お借りできますか。

(〇)ちょっと、100円、お借りできますか。

「借りる」が使えるものは
相手にとって、あまり負担とならないもの、
つまり、消しゴム、ペン、電話・・・などに限られるようです。

前回の「~てください」をご覧になりたい方は
以下をくりっくしてください。
https://www.tomojuku.com/blog/tekudasai/

ではではニゴでした。

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