「テンス」その3
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前回(「テンス」その2)では
相対テンスの途中まででした。
今回は
その続きです。
まずは復習から。
絶対テンスと相対テンスの基準点
単文と複文
単文は絶対テンスなので、
学習者にとっては非常にわかりやすいのですが、
複文は
従属節が相対テンスとなり、
「ル形」を使うのか、
「タ形」を使うのかを
考えなくてはいけないため、
学習者にとっては少しハードルが上がります。
単文の場合
(1)来月、沖縄に行く。
(1)は単文ですから、
「絶対テンス」です。
基準点は発話時で、未来(来月)
のことを述べているので、
ル形(行く)を使います。
複文の場合
(1)フランスに行くとき、成田空港で日本酒を買った。
・・・・(従属節) (主節)
主 節は絶対テンスです。
従属節は相対テンスです。
主節は
常に発話時が基準点となる絶対テンスですが、
従属節は
基準点が変化する相対テンスです。
従属節の基準点は
主節の動作が行われた時点となります。
上記の例(1)でみると、
「日本酒を買った」時点が基準となります。
従属節が相対テンスになる複文
複文は あまたありますが、
複文の従属節が相対テンスになるのものは
限られています。
「~ときに」「~前に」「~あとに」など
主節と従属節が
「時間的前後関係」にある表現です。
まず、「~ときに」から始めます。
「~ときに」
(1)田中さんに会った時、勇気を振り絞って、花束を渡した。
・・・・・(従属節) (主節)
従属節のテンスは
主節が基準となり、
主節との時間の前後関係で
「ル形」を使うのか、
「タ形」を使うのかが決まります。
この例文(1)では
主節の「花束を渡した」が基準となります。
次に、
主節の基準点と
従属節の「田中さんに会った」の
時間の前後関係を見ます。
「田中さんに会った」のは
基準点「花束を渡した」の
前でしょうか、後でしょうか?
時間の流れを書きだすと
「田中さんに会った」
・・⇓それから
「花束を渡した」(主節=基準点)
となります。
従属節「田中さんに会った」は
基準点である主節「花束を渡した」の
前のこと、つまり過去のことです。
そこで
従属節のテンスは
「(田中さんに)会った(=タ形)」
となります。
次に(2)の例文で考えます。
(2)田中さんに会うとき、お気に入りのワンピースを着る。
・・・・(従属節) (主節)
従属節のテンスを決めるのは、
主節の「ワンピースを着る」です。
主節が基準となりますから
従属節の「田中さんに会う」が
主節の前なのか、後なのかという
時間の流れを考えます。
時間の流れは
「ワンピースを着る(基準点)」
・・・⇓それから
「田中さんに会う」
となります。
従属節「田中さんに会う」のは
基準点である「ワンピースを着る」より
後のこと、つまり未来のことです。
そこで
従属節のテンスは
「(ワンピースを)着る(=ル形)」
となります。
「~前に」
ここからは
「~前に」を見ていきましょう。
(1)映画を見る前に、その原作を読む。
・・・・(従属節) (主節)
従属節のテンスを決めるのは
基準点となる主節です。
この例文の時間の流れを見ます。
従属節「映画を見る」のは
基準となる主節「原作を読む」の
前でしょうか、後でしょうか?
時間の流れを書くと
基準点「原作を読む」→それから「映画を見る」
となります。
「映画を見る」のは
基準点「原作を読む」のあと、
つまり未来のことです。
そこで
従属節のテンスは
「(映画を)見る(=ル形)」
となります。
「~あとで」
ここからは
「~あとで」を見ていきます。
(1)映画を見た後で、その映画の原作を読んだ。
・・・・(従属節) (主節)
従属節のテンスを決めるのは
基準点となる主節です。
従属節と主節の時間の流れを考えます。
「映画を見た」のは
基準点「原作を読んだ」の
前でしょうか、後でしょうか?
時間の流れを書き出すと
「映画を見た」→それから「原作を読んだ」
となります。
従属節「映画を見た」のテンスは
基準となる主節「原作を読んだ」の
前、つまり過去のことです。
そこで
従属節のテンスは
「見た(=タ形)」となります。
次に「タ形」について見ていきます。
「タ形」の二つの意味
(1)お昼ご飯を食べましたか?
この質問文には
二通りの答え方が考えられます。
①肯定:はい食べました。
・否定:いいえ、食べませんでした。
②肯定:はい、(もう)食べました。
・否定:いいえ、(まだ)食べていません。
二通りの答え方あるということは
(1)の質問文には
二通りの解釈がある、ということです。
解釈1:過去の用法
「(1)お昼ご飯を食べましたか?」の
解釈1:(発話時は午後3時過ぎで、
12時ごろの過去のことを聞いています)つまり、(今日の12時ごろ)
お昼ご飯を食べたのか否かを聞いています。
解釈2:現在完了の用法
「(1)お昼ご飯を食べましたか?」の
解釈2:(発話時は12時過ぎ)お昼ご飯がすんでいなかったら、
ランチに誘おうと思って
「食べる」という行為を現在の時点で
終えた(=完了した)のか否かを聞いている。
このように「タ形」には
「過去」を表す用法のほかに
「現在完了」を表す用法が
あります。
現在完了の「タ形」
上記の「現在完了」の「タ形」は
テンスではなく
アスペクトの視点です。
「テンス」その1で
テンスには諸説あるといったことを
思い出してみてください。
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テンスは「過去・現在・未来」といった
時間の概念も表せるし、
話し手の主観を述べる時には完了も表せる。
「タ形」を考えた時、
「タ形」はテンスとアスペクトの両方を
表すことができるという説。
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つまり、
「タ形」にはアスペクトの視点もあるのです。
アスペクトの復習
日本語のアスペクトは
動きを表す動詞が
今、どんな局面にあるのかを示す用法です。
以下に様々な局面を示します。
このように
「~ところだ」「~はじめる」「~ている」
「~おわる」「~てある」などが、
アスペクトの表現となります。
これらの表現を使うことによって、
「食べる」という動作の
様々な局面を表すことができます。
再度、現在完了の「タ形」について
日本語の「ル形」と「タ形」は
テンスだけではなく、上記のように
「アスペクト」も表せます。
「現在完了」とは
過去の出来事を今現在とつなげる、
というアスペクトの視点です。
(上の表の様々な局面のことです)
つまり、
過去に起こったことが、今現在と
つながっていることを示します。
これに対し、
「過去」とは
過去のことは過去のことで、
今現在とのつながりはなく、
すでにその出来事は終わっている、
ということです。
長くなってしまったので
現在完了のタ形については
次回、もう少し詳しく述べたいと思います。
次回以降をご覧になりたい方は
以下をクリックしてください。
→「テンス」その4
→「テンス」その5
ではではニゴでした。