条件表現「~たら」
条件を表す文について
* A 、 B 。
条件文とは、
Bが起こるかどうかは、Aが起こるかどうかによる、という文です。
つまり、
Bが起こるるかどうかは、Aの条件次第と言うことです。
条件を表す表現は たくさんありますが、
日本語教育では、条件文と言えば
「と」「ば」「たら」「なら」が代表的です。
(例1)春になると、桜の花が咲く。
(例2)話せば、わかる。
(例3)天気が良かったら、山に行こう。
(例4)これ、いらないなら、私にください。
条件表現は難しいと言われています。
その理由としては
(1)条件を表す表現が多い。
(2)それぞれの条件文の意味が似ていて、
……どちらでも使える場合が多い。
(3)使い分けが微妙であるにもかかわらず、日常会話でよく使う。
などがあげられます。
(3)でも述べた通り、
条件文は日常会話でよく使われますから、
初級で学ぶ必要があります。
初級段階では、
「と」「ば」「たら」「なら」の意味の重なる部分を、
なるべく見せない配慮が必要です。
初級で「と」「ば」「たら」「なら」を勉強するときには、
その典型文、基本的用法のみを提出し、
重なる部分の違いは、中級に行ってからもう一度深堀していきます。
条件文「~たら」について
条件文(「と」「ば」「たら」「なら」)のなかで、
守備範囲が一番広いのが、「たら」です。
そこで、ここでは条件文の「~たら」を見ていきます。
「~たら」の作り方
「~たら」は
動詞・形容詞などのタ形に「ら」のついたものですが、
「たら形」と教えたほうが、わかりやすいでしょう。
以下の表のように、動詞にも、イ・ナ形容詞にも、名詞にも使えます。
しかし実際には、
動詞とともにに使うことが、ほとんどです。
また。「~と」と「~たら」は丁寧形にも接続できます。
●お客様、お決まりになりましたら、お知らせください。
●このレバーを押しますと、水が出る仕組みになっています。
「~たら」の接続表
動 詞(た形+ら→飲んだ+ら) | 飲んだら |
飲まなかったら | |
い形容詞(た形+ら→忙しかった+ら) | 忙しかったら |
忙しくなかったら | |
な形容詞(た形+ら→ひまだった+ら) | ひまだったら |
ひまじゃなかったら | |
名詞+だ(た形+ら→休みだった+ら) | 休みだったら |
休みじゃなかったら |
条件文「~たら」の特徴
(1)話し言葉でよく使われます。つまり、書き言葉的ではないので、
論文などを書くときに、使ってはいけません。
(2)前件の文(従属節)が先に起こり、
それから後件の文(主節)が起こります。
前件と後件の文には時間的な前後関係があります。
●お酒を飲んだら、 頭が痛くなった。
・従属節(前件) 主節(後件)
→お酒を飲むことが先です。
お酒を飲んだ後で、頭が痛くなったのです。
(3)後件の文に、意志・希望・命令・依頼など、
様々なタイプの文を用いることができます。
●駅に着いたら、電話をしてください。
●田中先生に聞いたら、わかるかもしれません。
●暇だったら、一緒に行きませんか?
●安かったら、買いたいです。
→後件の文に、気持ちを述べる表現が使えるので、
日常会話によく表れるとも言えます。
(「~ば」や「~と」は、文末表現に制限があります)
(4)疑問詞も使えます。
●いつ行ったら、いいですか?
●誰に聞いたら、わかりますか?
●どれに乗ったら、座れる確率が高いですか?
(5)一回限りのことや、個別的なことに、多く使われます。
●トムさんがアメリカから戻ってきたら、一緒にスキーに行こう。
●日曜日、いい天気だったら、山にでも行こうかなあ。
→日常生活では、その場限り(一回限り)のことや、
個人のこと(個別的なこと)をよく話します。
「~たら」表現が日常会話によく表れるのは、
ここからも、わかります。
(6)前件の文の動作主体には「が」を用います。
(ほかの条件表現と同じです。)
●キムさんが来たら、始めましょう。
(7)前件と後件とでは、後件の文に焦点があります。
(「~ば」と反対です)
A:このボタンを押したら、どうなりますか?
B:このボタンを押したら、・・・音楽が流れだします。
「~たら」の様々な用法
1、仮定条件
2、確定条件
3、動作が完了した後(動作の連続)
4、発見
5、終助詞的用法
6、前置き表現
7、決まった言い方
「1、仮定条件」と「2、確定条件」の違いは
簡単に言うと、「もし」が使えるか、使えないかです。
1.仮定条件(「もし」が使える)
●宝くじが当たったら、世界一周旅行をしたいなあ。
→仮定条件は、実際に宝くじが当たるかどうかは、わかりません。
でも、「もし当たったら」と当たることを仮定して、どうしたいのかを述べています。
●余裕があるようでしたら、御寄付をお願いします。
●この家は地震が来たら、もたないかもしれない。
2.確定条件(「もし」が使えない)
●3時になったら、コーヒーでも飲みに行きませんか。
→確定条件は、近い将来に実際起こることを条件にしています。
確実に3時にはなります。その3時になった時のことを考えて、
どうするのかを述べています。
●トムさんは3時に学校に来ます。
トムさんが来たら、この本を渡してください。
●今年は夏になったら、海に行こう。
3、動作が完了した後(動作の連続)
*これは「条件」とは少し違います。
ある出来事が成立した後に、別の出来事が引き続いて起こることを表します。
●メールを送りましたので、読んだらご返事ください。
●授業が終わったら、すぐ帰ります。
●窓を開けたら、冷たい風が入ってきた。
*前件の動詞が動作の継続状態を表していると、
後件の出来事が、その動作の最中に起こったことを表します。
●家でテレビを見ていたら、宅配便が届いた。
4、発見(後件の述語はタ形)
●デパートに行ったら、休みだった。
●外に出たら、一面の銀世界でした。
●買い物をしていたら、クラスメートのトムさんに会った。
→前件の出来事がきっかけで、後件のことが分かったり、
予期していなかったことが起こった時に使います。
5、終助詞的用法
A:これ、おいしいかなあ・・・・・・
B:食べてみたら。
6、前置き表現
●どちらかと言ったら、日本酒よりワインの方がいいですね。
7、決まった言い方
●どうしたらいいですか。
●もしかしたら、田中さんではないですか?
●トムさんときたら、遊んでばかりいるんだから。
●そしたら行きましょうか。
●ことによったら、成功するかもしれません。
初級で学ぶ「~たら」の用法
初級では次の四つの用法を学びます。
この4つの方法で「~たら」表現の84%を占めています。
(Mathematical Linguisticsより)
1、仮定条件(43%)
2、確定条件(22%)
3、動作が完了した後(動作の連続)
4、発見(3と4で21%)
補足
「と」「ば」「たら」「なら」の中で使える範囲が一番広いのは
「~たら」です。以下の例文は「~たら」も使えますが、
「~と」「~ば」表現の方が自然です。
(1)恒常的、一般的条件の場合:「~と」「~ば」の方が自然です。
●この道をまっすぐ行くと、コンビニがあります。
●高度が上がると、空気が薄くなる。
●夏が来れば、必ず思い出します。
(2)論理的、時間的に前件が先、後件が後という
前後関係がない場合、「~なら」を使います。
●大阪へ行くなら、新幹線が便利です。
ではでは ニゴでした。