SNS時代の負の側面
SNSは
もはやなくてはならないモノ。
特に若い世代は
空気を吸うがごとく、
SNSを使っています。
そんな若い世代に
日本語を教える教師にとって、
SNSの知識は
「ちょっと、わからないなあ・・・」
では、済まされません。
利便性と危険性が
表裏一体のSNS。
便利なだけに
危険な目に合わないよう、
(そして、
学習者たちを危険な目に
会わせないよう)
SNSの負の側面の知識を
備えておきましょう。
<出てくる語彙>
・アルゴリズム
・アテンション・エコノミー
・インプレゾンビ
・インプレッション
・プラットフォーマー
・GAFAM
上記の語彙は
文の中で解説してあります。
SNSの誕生
2000年代半ばに登場したSNS。
当時のSNSはアメリカで
友達とのやり取りが
スムースにできるようにと
作られました。
それが十数年で世界規模に急拡大。
当時、
良かれと思って開発されたSNS。
それが今や
そのSNS上で
目を覆いたくなるような
中傷や差別的な言論が
はびこるようになるとは、
創設者たちも
想像だにしていなかったでしょう。
SNSが登場した時は
属性や年代、国境さえも
軽々と越えて、
交流できる言論空間に
「なんといい時代になったのだろう」と、
胸が高鳴りました。
そして
その言論空間は
「良き」空間であり続けると、
深く考えることもなく、
ただ漠然と思っていました。
SNSの変容
ところが、
このSNSの言論空間は
悪がはびこる場所へと
変容していきます。
その理由の一つとして、
SNS上は「数の論理」が
優先される世界だ
ということが言えます。
つまり、
投稿や動画を
閲覧する人が多いほど、
SNS事業者の
ネット広告収入が増えていきます。
そして、
事業者は
利用者(悪く言えば、金づる)を
できるだけ長く
つなぎ留めておくために、
個々人の、好みの投稿を提示する
「アルゴリズム」の改良に
血道をあげています。
アルゴリズムとは
アルゴリズムが
活用されている典型例は
ネットの検索サービスです。
Google やYahoo!など
ネット上の検索サービスは
すべてアルゴリズムを使っています。
(良い)アルゴリズムの例を示すと・・・
(例)横浜市中区にいる人が
「ヘアサロン」というキーワードで
検索すると、
中区にあるヘアサロンから表示されます。
これはアルゴリズムが
「ユーザーの
現在地や過去の検索履歴をもとに
検索結果を表示する」というように
なっているからです。
つまり、
SNS事業者は
利用者が
どんな投稿や動画に
コメントや「いいね」を
つけているのかなどを分析し、
「アルゴリズム」を使って、
一人一人に合わせたコンテンツや
広告を表示するのです。
この、
何を優先して表示させるかのルールが
「アルゴリズム」です。
数の論理の支配
今のSNSは
完全に数の論理に支配されています。
そこで、
人々の関心や注目を
集めやすい情報ほど、価値があります。
(こうした、人々の関心や注目が
お金につながる経済モデルを
アテンション・エコノミー=関心経済と言います)
現代のネット社会への憂慮
2023年、京都市で開かれた
国連のフォーラムで、
欧州連合(EU)の副委員長、
ベラ・ヨウロバー氏は
●「ネット上で恥ずべき行為が
信じられないほど増えている」
●「女性やLGBTQ+ら、
マイノリティーの人々が
名誉棄損や誹謗中傷の標的となり、
被害の矢面に立たされている」と、
指摘しました。
そして
●「長年にわたり、大手ハイテク企業の
アルゴリズムを動かしている人たちは
憎悪や憂慮すべきニュースで
大金を稼いできた。私はそれを
汚いビジネスと呼びたい」
とも言っています。
SNSによるアメリカの分断
2016年ごろ、アメリカでは
大統領選挙をめぐる報道に、
SNS上の感情的な意見が
取り上げられました。
すると、
それを発端にして、
メディア空間が
異常に激化していく、
その様を
私たちは目の当たりにしました。
SNSのアルゴリズムは
発言が過激化すればするほど、
その感情的な部分を
拾い上げてゆき、
こうした感情的言論は
収拾がつかないほどに、
増殖し続け、
SNSが
アメリカ世論を分断していったのです。
あの時のSNS上は
まさに「刺激の競争空間」となっていた、
と表現した人もいます。
日本での憂慮すべき事態
日本でも
深刻な状況が、すでに起こっています。
X(旧ツイッター)の急変
全世界で5億人以上が使っている
X(旧ツイッター)は
22年10月、
イーロン・マスク氏が
旧ツイッター社を買収し、
ルールが一変しました。
X社の半分ともいわれる人々が
解雇され、
問題のある投稿を
チェックする役割の人々も
X社から、いなくなっていきました。
そのうえ、
23年の夏には
表示回数などが、一定の条件を満たせば
収入を得られる
「広告収益分配制度」
が導入されました。
これにより、インプレゾンビが
大量に出現し始めます。
インプレゾンビとは
コンテンツが他の利用者に
表示された回数を
「インプレッション=閲覧数」
と言います。
SNSで
刺激の強い情報や
人気のある投稿を、
コピー(盗用)して、
再投稿し、
収益を稼ごうとする
人々(アカウント)を
インプレゾンビと言います。
彼らは
ゾンビのように
関心が集まっている投稿に群がり、
閲覧数=インプレッション
を、稼ごうとするのです。
つまり、
インプレゾンビとは
「インプレッション」と
「ゾンビ」との造語です。
23年に制定された
「広告収益分配制度」では、
インプレッション(閲覧数)を
多く獲得すればするほど
収益につながります。
そこで、
その仕組みを
悪用し始めたインプレゾンビたちが
大地震や大事故などといった
一般の人々の関心の高いニュースに
利益を求めて群がります。
その結果
24年元日の能登半島地震では
「偽りの救助要請」が
大量に投稿されました。
その他にも
●「富士山が噴火した」
●「○○年、○○月に、○○周辺で、
大地震が発生する」など
全く根拠のない、偽りの情報が
金銭目的で、
投稿され続けています。
このように私たちは、
すでに
知らず知らずのうちに
アテンション・エコノミーという
ビジネスモデルに
飲み込まれてしまっています。
現在日本では
ヨーロッパとは違い、
プラットフォーマーを
直接規制する仕組みはありません。
プラットフォーマーとは
プラットフォーマーとは
インターネット上で、
大規模なサービスを提供している
「GAFA(ガーファ)、GAFAM(ガーファム)」
などの、企業のことです。
G=Google
A=Apple
F=Meta (旧Facebook)
A=Amazon
M=Microsoft
京都大学院教授、曽我部真裕氏は
日本では
「情報空間の無秩序化が進行し、
個人の自由や
民主主義に対する
危険が生じている」と、
警鐘を鳴らしています。
GAFAMの昔と今
以前は
あこがれの対象だった
「GAFAM」
世の中に登場するやいなや、
世界中を席巻し、
今やこの国も
これらのプラットフォームを
使わないと、
生活が成り立たないほど
浸透しています。
そして
現在、彼らの代表は
一企業の代表にすぎないのに、
あまりにも強大な権力を
持つがゆえに
一国の総理大臣とも
やすやすと
会うことができるのです。
(今までは
そうしたことのできる企業は皆無でした)
これまで
私たちに多いなる利便性を
もたらしてくれた「GAFAM」
しかしながら、
今は
度を越えたことを
やり始めているように見受けられます。
つまり、
●あきらかに人権問題に
引っかかっている事態が
多発しているのに、
放置したまま。
規制する意思があるのか、
ないのか・・・
●人生を破壊されかねないほど
大きな損害を被っている個人が
いるのに、
やはり放置したまま。
見てみないふりをしているような・・・
以前は
目指すべき存在ともいえた
プラットフォーマーでしたが、
今は
世界を牛耳れるほど巨大化した
慢心からか、
時に
危険を感じる存在となっています。
私たちは
SNSから身を守っていかなくては
ならなくなっています。
自己防衛する”すべ”を
見つけるためにも、
私たちは
目の前で起こっている問題について
「我関せず」と
高みの見物をするのではなく
その問題を
一つひとつ意識して、
自分事として
見ていく必要があります。
弱者が標的となりやすいのが
今のSNS空間です。
私たちの教え子は
ほとんどが弱者の側に
入ってしまうでしょう。
自分自身を守るとともに、
彼らも守っていかなければなりません。
問題解決の道は
必ず見つかるはずです。
時間はかかるかもしれませんが、
あきらめずに、
模索していきましょう。
ではではニゴでした。