品詞分類・その3
ここでのテーマは
日本語文法と国文法です。
品詞分類においても
両者の違いについて見ていきます。
前回の
「日本語文法と国文法」の違いについては
以下をご覧ください。
↓↓↓
国文法と日本語文法
品詞分類とは
品詞分類の考え方は
日本語文法も国文法も同じです。
品詞分類とは
文法的な性質の違いによって、
単語を分類したものです。
では単語とは何か、少し復習しておきます。
単語とは
「言葉の単位」というテーマでは
以下のように
文を大きさによって五つに分類しました。
①文章 > ②段落 > ③文 > ④文節 > ⑤単語
ご興味のある方は以下をクリックしてください。
↓↓↓
言葉の単位
文を大きさで5つに分類した時
その最小単位が「単語」となります。
単語とは
これ以上分けることができない、
最小の単位ですから、
無理に分けようとすると
その言葉は
意味や働きを失ってしまいます。
例えば
(例1)を単語で分けると
(例2)のようになります。
(例1)
田中先生は英語が話せると思う。
⇓
(例2)
田中/先生/は/英語/が/話せる/と/思う。
この文は
名詞、助詞、動詞の
3つの品詞からできています。
田中、先生、英語 → 名詞
は、が、と → 助詞
話せる、思う → 動詞
つまり
単語は何らかの品詞に分類されます。
では先に
国文法の品詞分類について
見ていきます。
国文法の品詞分類
国文法では単語は
名詞、動詞、形容詞、助詞など
10の品詞に分けられています。
以下に
国文法の品詞分類表を載せておきます。
<国文法の品詞分類表>
自立語 | 活用する | 動詞、形容詞、形容動詞 |
活用しない | 名詞、副詞、連体詞、接続詞、感動詞 | |
付属語 | 活用する | 助動詞 |
活用しない | 助詞 |
<補足>
国文法では自立語を「詞」、付属語を「辞」とも言います。
また、
動詞・形容詞・形容動詞を用言、
名詞(数詞・代名詞・形式名詞など)を体言と言います。
国文法では
このように
品詞を10に分類しています。
では、次に
日本語文法の品詞分類について見ていきます。
日本語文法の品詞分類
日本語文法と国文法との大きな違いは
わかりやすさです。
品詞の分類においても
日本語文法は
国文法に比べ、より
わかりやすくなるように
工夫されています。
その一つが
形容詞です。
●国文法では形容詞を
「形容詞」と「形容動詞」という
二つの品詞に分けています。
●日本語文法では
両者は同じ形容詞である、とします。
そして、
活用によって
「イ形容詞」と「ナ形容詞」に分けます。
「イ形容詞」と「ナ形容詞」の
名前の由来は
形容詞で名詞を修飾してみると
一目瞭然です。
(1)美しい自然
(2)静かな湖畔
●(1)のように「美しい」と
イの形で名詞を修飾するグループを
「イ形容詞」
●(2)のように「静かな」と
ナの形で名詞を修飾するグループを
「ナ形容詞」と呼びます。
日本語文法では
国文法のように
細かな品詞分類を行いません。
なぜなら
日本語文法とは
日本語を話せるようにさせるための手段として
用いるものだからです。
そこで、
話すときに知っていると便利だと思われる
品詞のみを用いています。
例えば
「~(し)ていだだけませんか」
といった言葉の連続は
●国文法では、
より細分化して、品詞分類を行いますが、
●日本語文法では
「人にものを頼むときに使う表現」
として学びます。
つまり
「~(し)ていだだけませんか」を
一つの表現として教えるので、
これ以上細かく分類することはしません。
日本語文法でよく使われる品詞は
以下の7つです。
動詞、名詞、イ形容詞、ナ形容詞、
副詞、接続詞、助詞
<補足>
●日本語文法では
「感動詞」や「連体詞」という品詞名を
あまり使いません。
●また、「助動詞」は
動詞の活用として扱っています。
日本語を話すときに
細かい品詞分類は必要ありません。
国文法の品詞分類を日本語教育に
持ち込まないようにしましょう。
品詞と単語の関係
文を大きさによって五つに分類し、
大きい順に並べます。
①文章 > ②段落 > ③文 > ④文節 > ⑤単語
「単語」とは
これ以上分けると意味がなくなってしまう
ところまで区切った
言葉の最小単位でした。
「単語」は
いずれかの品詞に所属します。
例えば
「て」「に」「を」「は」は
助詞という品詞に所属しています。
そこで
「て」「に」「を」「は」も
一つの単語とみなします。
(例)今日はいい天気だ。
↑
「は」=「単語」=「助詞」
一つの「単語」が
一つの「品詞」に所属していれば
わかりやすいのですが、
そうでない単語もあります。
次の例は
一つの単語が
二つの品詞にまたがっているものです。
一つの単語が
二つの品詞に使われる例
「単語」は
いずれかの品詞のグループに入ります。
ところが、
二つの品詞の性質を持つ「単語」もあります。
例えば
「元気」という単語です。
●「元気な人」は
「ナ形容詞」に分類され、
●「元気が出る」の「元気」は
「名詞」に分類されます。
品詞の転成
(1)「悩み」相談室
(2)恋に「悩み」、苦しむのは青春の特権だ。
例文(1)(2)の「悩み」は
同じ形です。
しかし、
(1)と(2)の「悩み」は
品詞が違います。
(1)の「悩み」は名詞で、
(2)の「悩み」は動詞です。
(「悩み」=動詞「悩む」の連用形)
(1)の名詞の「悩み」は
動詞の連用形が
そのままの形で名詞になりました。
このように
ある品詞の単語が他の品詞に転じることを
「品詞の転成」と言います。
「品詞の転成」で多いのは
動詞の連用形が名詞になる場合です。
例えば
「光(ひかり)」という名詞は
動詞「光る」の連用形から転成したものです。
また、
形容詞の連用形が名詞になる例も
動詞ほど多くありませんが、見受けられます。
●「遠く」の景色
●「多く」の意見
この「遠く」や「多く」という名詞は
形容詞である「遠い」「多い」の連用形から
転成したものです。
3つの品詞にまたがる単語
品詞の転成が起こるのは
●動詞連用形が名詞に、
●形容詞連用形が名詞になる、
というパターンです。
また、
少数ではありますが
副詞になる例もあります。
(ナ形容詞)
●あの国の学生には特別な支援が必要です。
(名詞)
●これに特別の意見があるとは思えない。
(和辻哲郎氏からの例文)
(副詞)
●特別変わったことはありませんでした。
このように
全ての単語が一つの品詞に収まる
とは限りません。
品詞間の意味の連続
また、
これはあらゆる言語に言えることですが、
Aという品詞とBという品詞の間に
きっちりと線を引くことは
なかなかできません。
意味は連続しています。
例えば
「好(す)く」という動詞と
「好きだ」というナ形容詞の
意味はほぼ同じです。
もう一つ例を挙げます。
意味の上から
●「状態・属性」を表すものを
「形容詞」に分類し、
●「動作・作用」を表すものを
「動詞」に分類します。
ところが、
動詞に分類されている
「(本が)ある」
「(英語が)できる」
「(お金が)いる」
などは
意味からみると「形容詞」に
非常に近いと言えます。
これは「動詞」と「形容詞」の
意味の連続性の例となります。
最後に
形(品詞)は違っても、
意味はほとんど同じである単語を
紹介しておきます。
複数の品詞にまたがる単語
Ⅰ:品詞としては
イ形容詞とナ形容詞に分かれますが、
意味はほとんど同じです。
(1)赤ちゃんの髪の毛はとても柔らかい。(イ形容詞)
(2)赤ちゃんの髪の毛はとても柔らかだ。(ナ形容詞)
(1)暖かい(イ形容詞)
(2)暖かだ(ナ形容詞)
(1)細かい(イ形容詞)
(2)細かだ(ナ形容詞)
Ⅱ:品詞は国文法で言うと「形容詞」と「連体詞」です。
(1)この大きい方のペットボトルには麦茶が入っています。(イ形容詞)
(2)ママ、あそこに大きなワンちゃんがいるよ。(連体詞)
(1)小さい(イ形容詞)
(2)小さな(連体詞)
※一般的に「~い」は客観的な大きさ、
「~な」は主観的に感じる大きさ
を表すと言われています。
(1)おかしい(イ形容詞)
(2)おかしな(連体詞)
Ⅲ:品詞は「名詞」と「ナ形容詞」です。
(1)元気(名詞)
(2)元気な(ナ形容詞)
(1)幸せ(名詞)
(2)幸せな(ナ形容詞)
(1)健康(名詞)
(2)健康な(ナ形容詞)
Ⅳ:品詞は「名詞」と「ナ形容詞」と「副詞」です。
(1)特別(の)(名詞)
(2)特別な(ナ形容詞)
(3)特別(副詞)
(1)いろいろ(の)(名詞)
(2)いろいろな(ナ形容詞)
(3)いろいろ(副詞)
Ⅰ~Ⅳの例を見てもわかるように、
品詞は
きっちりと分けられるものばかりではありません。
複数の品詞にまたがるものもあります。
そこで、
研究者によって
分類の仕方が異なったり、
解釈が違ったり、
ということが起こります。
日本語教師としては
これまでの文法は
学習者に教える必要はありません。
知識として
「こんな例もあるんだなあ」
と読んでいただければと思います。
「国文法と日本語文法」の違いシリーズの
「動詞の活用」については
以下をご覧ください。
↓↓↓
動詞の活用・その4
国文法と日本語文法・その1
↓↓↓
国文法と日本語文法・その1
言葉の単位・その2
↓↓↓
言葉の単位・その2
動詞の音便・その5
↓↓↓
動詞の音便・その5
動詞のテ形・その6
↓↓↓
動詞のテ形・その6
ではではニゴでした。