赤ちゃんは、どう言葉を学ぶのか?

胎内ですでに学びは始まっていた

赤ちゃんは
どうやって言葉を学ぶのでしょう。

最新の研究では
なんと「胎内にいる時から
言葉の学びは
すでに
始まっている」
ということがわかっています。

胎児は羊水の中にいます。

羊水の中では
外で何を話しているのか
はっきりとは聞こえません。

でも
音が高くなったり、低くなったりするのは
わかります。

また、
「♪タンタタ、♪タンタタ、♬タンタンタン」
のようなリズムもわかるのです。

胎児は
お母さんのおなかの中で
いつも母語の
リズムや音の強弱・高低といった調べを
聞いています。

聞きながら、
母語を学んでいるのです。

言語の特徴

言語の特徴は
胎児も聞いている
音の強弱や高低の調べに表れます。

大人が
知らない外国語を聞いて、
「あっ、これはフランス語ぽいな」
「これはドイツ語かな」
「うん、これは中国語だ」

と、直観的にわかるのは

それぞれの言語の
音の特徴を聞き取っているからです。

お腹の中の赤ちゃんは
毎日毎日お父さん、お母さんの
話す言葉の調べを
耳を澄ませて聞いています。

その結果
生まれ来る時には
母語のリズムや
音の高低のパターンを学習しており、
母語の調べの特徴を
すでに
身に付けているのです。

赤ちゃんのすごさ

お腹の中で毎日
両親の言葉を聞いていた赤ちゃん。

その赤ちゃんが
こちらの世界に出てきたときの
泣き声は
言語によって変わってきます。

胎内で
日本語を聞いて育った赤ちゃんは
日本語の調べで泣くことがわかっています。

アメリカで生まれた赤ちゃんは
英語の調べで泣くのです。

そのうえ
彼らは驚くべき聴力を持っています。

言葉のイントネーションやリズムから
自分の母語と
母語でない言語とを
聞き分けることができるのです。

赤ちゃんは
知識ゼロで生まれてくるのではありません。

この世界に誕生した時には
すでに
母語の音声の特徴を
知識として身に付けているのです。

赤ちゃんって、すごい!

赤ちゃんの言葉の学び方

生まれてきたときには
すでに母語の音声の特徴を
身に付けている赤ちゃんですが、
この世界では
どのようにして
言葉を学んでいくのでしょうか。

音声器官が未発達な赤ちゃんは
まだ、
はっきりとした言葉を
話すことができません。

そこで
胎内にいた時のように
まず
耳から、聞くことから
学び始めます。

 

では
話が聞けるようになるためには
どういった過程を踏んでいくのでしょう。

みなさんは
こんな経験がありませんか?

けっこう昔の事でしたが、
ラジオの短波放送から
全く聞いたことのない外国語が
流れてくることがありました。

意味は
もちろんわかりません。
そして
どんどん流れてくる言葉の
どこから、どこまでが一つの単語なのか、
その区切りさえ、見当もつきませんでした。

 

こうしたことから
人の話を理解するには
流れ来る音声のまとまりから
一つ一つの単語を
切り出すことのできる力が必要である
ことがわかります。

つまり
ドウシテナイテイルノカシラオナカガスイ
タノソレトモオシメガヌレテシマッタノ」

この連続音を聞いたとき、
「ドウシ」「テナイ」「テイル」「ノカ」「シラ」
と区切るのではなく、
「ドウシテ」「ナイテイルノ」「カシラ」
のように区切るのだ、
という聴力が必要なのです。

 

言葉の基本は単語です。
私たちは規則にのっとって、
様々な単語を組み合わせ、
言葉を紡いでいきます。

 

そのため、
人の話を理解するには
「ここから、ここまでが一つの単語である」と、
区切ることのできる能力が必要不可欠です。

 

赤ちゃんは、どうして言葉のまとまりから
個々の単語を切り出すことができるのか?

人の話し方にはリズムがあります。
あるところでは強く、高く発音し、
あるところでは弱く、低く発音します。

また、
はっきりと発音するところもあれば、
まとめて素早く、
前の音と後ろの音をつなげるようにして、
発音するところもあります。

このような強弱、緩急、区切る・つなげる
といったリズムやイントネーションは
多くの場合、
文の区切りと呼応しています。

赤ちゃんは
お腹の中で、
こうしたリズムやイントネーションの
パターンを学んでいます。

誕生後は、
胎内で学んだこのパターンを手掛かりにし、
ひとまとまりの文から
一つ一つの単語を
区別する力を養っています。

英語を母語とする赤ちゃんは
特に
単語のアクセントのある場所を手掛かりにして、
連なっている文から、
単語を切り出しているそうです。

赤ちゃんは
泣くことが仕事です。と
言われたりもしますが、

人の話を聞いているときには
頭をフル回転させています。

そして、
周りの人の話し声を
無意識のうちに分析し、
ひとまとまりの文から、
一つ一つの単語を見つけだしては
記憶しているのです。

赤ちゃんは
本当に勉強家です。

そして
言葉の勉強は
やはり
聞く」ことから始まるのです。

 

赤ちゃんは「rice」と「lice」を
どうして聞き分けられるのか

日本人がとても苦手としている
英語の「R」と「L」の発音。

よく話題になるのが
rice = お米
lice = シラミ

「R」と「L」の違いで
こんなにも意味が違ってしまう・・・
という例です。

では
英語を母語とする赤ちゃんは
この音の違いを
どう学ぶのでしょう。

実は
驚くべきことに
生まれたばかりの赤ちゃんは
自分の母語となる言語の音はもちろん、
世界中の言語の音を
聞き分ける力を持っています。

ところが
本当に残念なことなのですが、
一歳の誕生日を迎えるころ、
日本語を母語とする赤ちゃんは
「R」と「L」の聞き分けが
できなくなってしまいます。

日本人は「R」と「L」の音を
どうして聞き分けられないのか?

最新の研究結果から、
赤ちゃんは
「人が発声する、あらゆる音を
聞き分ける能力を持って生まれてくる」
ということがわかっています。

日本語を母語とする赤ちゃんでも、
生まれた時には
「R」と「L」は違う音である、
と聞き分けられるのです。

ところが、
その能力は
徐々に失われていきます。

 

なぜなら、
日本語の言葉の中に
「R」と「L」を区別する単語が
ないからです。

スポーツの「レース」(=race)も
編み物の 「レース」(=lace)も
同じ「レース」と発音するからです。

研究によると、
生後10か月くらいまでの赤ちゃんは
あらゆる音の区別ができるそうです。

それ以降、
自分の言語で区別する必要のない音は
生活上、使わないので、
だんだんと聞き分けられなくなっていきます。

私たち日本人が
「R」と「L」を区別することが難しいのは
このためです。

すでに、
一歳になるころに
その弁別能力を
失っていたのです。

言葉の学び方

「R」と「L」を区別する力が
生後10か月を過ぎたころに
消失してしまったことを
英語を学ぶ段になると
恨めしくなったりもします。

しかし、
言葉の知識とは
ただ増やせばいいというものではありません。

母語特有の単語の切り出し方を
身に付けるには、
しかも
なるべく早く体得するには
自分の母語では使わない音を
削り落としていく必要があります

言葉の学習とは
細かく区別すればするほど
話すときのじゃまになったりするのです。

これは音声に限ったことではありません。
文法でも、
微に入り細に入りという学習を進めていくと
その知識が話すことを阻害します。

赤ちゃんの言葉の学び方は
とても効率的です。

母語を習得していくプロセスは
大人になってからの言葉の学習方法に
大きな示唆を与えてくれている、
そう思いませんか?

 

ではではニゴでした。

 

 

One Response to “赤ちゃんは、どう言葉を学ぶのか?”

  1. フクオカ より:

    とても興味深いお話でした。
    もっと自分なりに勉強してみたいと思いましたが、こういうのは何と呼ばれる分野なのでしょうか?

    子供の言語習得に関連して。日本語を学ぶ人に難しい文型を子どもは難なく使います。例えば子どもが一番最初に覚える受け身や使役ってなんなのかなぁとよく考えます。怒られる、や叩かれる、取られる、かな?くれる、もらう、あげるも間違えない。すごいな。

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