妻?嫁?女房?奥さん?家内?かみさん?(その2)
パートナーの呼び方は?
男性は自分のパートナーをどう呼んでいるでしょうか。
(1)妻(2)嫁(3)女房(4)奥さん(5)家内(6)かみさん
たいてい、この六つのうちのどれかで、呼んでいると思われます。
この中で、どの呼び方が適切なのかは、
それぞれの言葉の成り立ちを考えれば、わかってきます。
前回は
(1)妻(2)嫁(3)女房
この言葉の成り立ちについてみていきました。
(この言葉の成り立ちは、大東文化大学文学部准教授
山口謡司氏の説によります。)
(1)妻 | 親に認められて共に生活する女性 |
(2)嫁 | 息子のパートナー |
(3)女房 | 使用人の女性 |
前回、男性が自分のパートナーを呼ぶとき、
(1)妻(2)嫁(3)女房
の中では、「妻です。」を使うのが、最も適切ということがわかりました。
そして、「女房」は、なんと、昔は「使用人の女性」という意味でした。
この意味を知ってしまうと、
「私の古女房です。」などと、使ったら、
もう、ヒンシュクもんです。
今回は
(4)奥さん(5)家内(6)かみさん
について、みていきましょう。
(4)奥さんとは(奥さんという語の成り立ち)
「北条幻庵覚書」という本が、
鎌倉時代、1562年ごろに書かれました。
ここに「奥さん」の由来である
「奥方」という言葉が載っています。
きんねんざとうと申せば いずれも おくがたへ参候
ここから、
奥方という言葉は、「奥の方の部屋」を表す
言葉だったことがわかります。
室町時代、身分の高い男性は自分のパートナーを
屋敷の奥の方に住まわせていました。
そこで、周りの人々は、その女性のことを敬意を込めて、
「奥方」と、呼ぶようになったのです。
「奥方」という言葉は、次第しだいに変化していき、
周りの人々は、身分の高い人物(男性)のパートナーを
「奥様」 「奥さん」と呼ぶようになりました。
つまり、「奥さん」の本来の意味は
「奥の方の部屋に住んでいる、他人のパートナー」
という意味です。
そこで、自分のパートナーを呼ぶときには
適していないと言えます。
(5)家内とは(家内という語の成り立ち)
「家内」という言葉は、
もともと「家の中」という意味で使われていました。
その言葉が、どうして、人に対して使われるようになったのか、
それは、明治時代の社会の大変革にあります。
明治時代、開国日本に、
西欧列強諸国と同じ会社制度が誕生します。すると、
男性は外に出て、会社で働き、
女性は専業主婦として、家の中を守る。
こうした、家族がどんどん増えていきました。
そこで、家の外で働くようになった男性が、
自分のパートナーのことを「家の中にいる人」という意味で、
「家内」と呼ぶようになったのです。
つまり、「家内」という言葉は
「家の中にいる人」という意味です。
現代社会では、普通に女性も外で働いています。
ですから、自分のパートナーのことを
「家内」(=家の中にいる人)と呼ぶのは、あまり、ふさわしくないようです。
(6)「かみさん」とは(「かみさん」という語の成り立ち)
「かみさん」という言葉は、目上の人を表す言葉として使われていました。
そもそも、
「かみさん」は、目上の方を表す「上様(かみさま)」
が変化して、できた言葉です。
つまり、「かみさん」は
自分よりも偉い人、立場が上の人を指す言葉だったのです。
現代社会では、夫婦は対等な関係です。
つまり、立場の上の人を表す、「かみさん」は
適当ではないと言えます。
これまで、
(1)妻(2)嫁(3)女房(4)奥さん(5)家内(6)かみさん
の言葉の成り立ちについてみてきました。
本来の意味を、もう一度表にして整理してみます。
(1)妻 | 親に認められた共に生活する女性 |
(2)嫁 | 息子のパートナー |
(3)女房 | 使用人の女性 |
(4)奥さん | 奥の方の部屋に住む女性 |
(5)家内 | 家の中にいる人 |
(6)かみさん | 目上の人 |
こうしてみると、
現代社会で男性が自分のパートナーをどう呼ぶのがいいのか、
その答えとして、最もふさわしい言葉は
「妻」ということになります。
これは「この差って何ですか」というテレビ番組から
書き起こしました。
この番組では、日本に住んでいる外国の方が
「どうして?」
「この言葉は、どこがどう違うの?」
と不思議に思ったことを時々テーマにしているようです。
私たち日本人が、ふだん何気なく使っている言葉、
外国の方からすれば、不思議がいっぱいなのでしょうね。
そして、その言葉のそもそもの意味は、
時代、文化、生活様式など、
様々なことが要因となって、使われ、変化していきます。
日本人にとっても、知らないことが多いのだなあ、と
今更ながらに感じました。
言葉って、本当に楽しいですね。
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ではではニゴでした。