妻?嫁?女房?奥さん?家内?かみさん?(その1)

パートナーの呼び方は?

みなさんは、自分のパートナーのことを何と呼んでいますか?
(今日は男性が自分のパートナーをどう呼ぶのが、いいのかのお話です)

どこのテレビ局か失念したのですが(TBS?)
「この差って何ですか?」という番組があります。
この番組で、とても興味深い話をしていたので、
ご紹介したいと思います。

大東文化大学文学部准教授
山口謡司氏による解説です。

山口教授によれば、
それぞれの言葉の成り立ちを考えれば
自分のパートナーを、「何と呼んだらいいのか」
がわかると、おっしゃっています。

そこで、順次
(1)妻(2)嫁(3)女房(4)奥さん(5)家内(6)かみさん
の言葉の成り立ちを見ていきましょう。

(1)妻とは

」という言葉は、
なんと「古事記」に記載されています。

古事記は日本最古の歴史書です。
奈良時代、712年ごろに書かれました。

そんな昔の書物に、すでに「」という言葉があったなんて、
驚きですね。
山口教授によると、古事記に

私の名はアシナヅチといい、
の名はテナヅチという。

のように載っているそうです。

これは、712年の文ですが、
意味は現代の解釈でよく、

自分の名と、「」の名を述べたものです。

歴史家の見解によると、奈良時代には、
まだ、正式な婚姻制度が、ありませんでした。

そこで、成人し、女性と家庭を持ちたい場合、
親からの許可だけで結婚が成立していました。

つまり、奈良時代の「」とは
親に認められ、共に暮らす女性」という意味だったのです。

現代と同じく、奈良の都でも、
自分のパートナーのことを「」と呼んでいたんですね。

現代のような婚姻制度は、
明治時代になって確立しました。

明治時代の民法に
ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」と、
記載されています。

こうしてみていくと、
」という言葉は、
奈良時代から明治時代を経て、現代に至るまで、
同じ意味で使われ続けていることがわかります。

」とは由緒正しい言葉なんだと、見直してしまいます。

つまり、今の時代に、男性が
自分のパートナーのことを他の人に紹介する場合、
「妻」はふさわしい、と言えます。

(2)嫁とは(嫁という語の成り立ち)

次に、
自分のパートナーを、他の人に紹介する時、
「私のです。」は、正しいのでしょうか。

鎌倉時代、1275年ごろに書かれた「名語記」という書物に、

子息が妻を よめとなつく

と書かれています。これを読み解くと、
「息子の妻をと名付ける」
という意味になります。

つまり、このころから、男性の両親が
息子の妻のことを「」と呼んでいたことがわかります。

では、どうして、息子の妻のことを「」と呼んだのでしょうか。

それは息子の両親が、
息子と一緒に住むようになった女性のことを、
近所の人に紹介するとき、
「うちに良い女が来てくれた」と言っていたからです。

当時、女という漢字は「女(め)」と発音されていました。

「良い女」は→「良(よ)い女(め)」→「よいめ」と言われていたのです。

「よ(い)め」が簡略化され、「よめ」となったと考えられます。

本来、「」という言葉は、
息子の妻」という意味で使われていました。

そこで、自分のパートナーのことを
「私の嫁です」と言うのは どうも適切ではないようです。

(3)女房とは(女房という語の成り立ち)

では、パートナーの女性を「女房」というのは、適切なのでしょうか。

平安時代、身分の高い貴族の御屋敷には、必ず
「お手伝いさん」が数名いました。

つまり、自分の妻以外に、
掃除や、食事、身の回りの世話をしてくれる、
使用人がいたのです。

そのお手伝いさんは、女性で、
自分の屋敷に住まわせていました。

そして、その使用人の「性」が住んでいる部屋のことを
」と言いました。

つまり、「女房」とは、使用人の女性が住んでいる部屋のことです。

それが、いつしか、使用人の女性のことを
女房」と呼ぶようになったのです。

本来、「女房」とは、「使用人の女性」という意味なので、
自分のパートナーを呼ぶには、ふさわしくないですね。

今までの語の成り立ちをまとめてみます。

(1)妻 親に認められて共に生活する女性
(2)嫁 息子のパートナー
(3)女房 使用人の女性

上記の表をみると、男性が自分のパートナーを呼ぶときには、
「妻です。」を使うのが、最もふさわしいようです。

「女房です」は
言葉の成り立ちからいうと、一番ふさわしくないようです。
そういえば、昔の人ほど、
「私の女房です」と言っていたような・・・・・・

「女房」の本来の意味を知ってしまうと、
使ってほしくないですね。

男性のみなさま、気を付けてくださいませ。
「私の妻です。」を使うようにしましょう。

さて、まだ、
(4)奥さん、(5)家内、(6)かみさん
の語の成り立ちが残っています。

しかしながら、ちょっと長くなりすぎましたので、
次回に書きたいと思います。

日本語の自分のパートナーの呼び方、奥が深いですね。

何気なく使っている言葉も、
その語の本来の意味を知ってしまうと、
使えなくなってしまうことも あるのですね。

続き(その2)をご覧になりたい方は
以下をクリックしてください。

https://www.tomojuku.com/blog/strange-japanese/okusan/

ではではニゴでした。

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