日本語を勉強をします。
「日本語を勉強をします。」
学生が「この文はだめですか?」と質問してきました。
非文だということは、すぐにわかります。
でも、どうして非文なのでしょうか。
今回は、上記の質問の答えについて考えます。
初級のテキスト、例えば「みんなの日本語」では
まず、第4課で、「勉強する」を学びます。
ただし、「日本語を勉強します」という文ではなくて、
「毎日勉強します。」とか、「きのう勉強しましたか?」のように、
「~を勉強します」の形は避けています。
これは第4課では「寝ます」「起きます」「働きます」のような
「を格」をとらない動詞を選んで、出しているからです。
次に、第6課で、「日本語を勉強します。」が提出されます。
どうして「勉強をします」ではなくて、
「日本語を勉強します。」という形で提出されるのか。
それは、
「何を買いますか?」(「靴を買います。」)
「何を食べますか?」(「ラーメンを食べます。」)
「何を飲みますか?」
といった質問を多用する課なので、
「何を勉強しますか?」(日本語を勉強します。」)も
同じ形で使えるため、便利だからです。
もし、「勉強をします」で提出すると、
「何を勉強(を)しますか?」の質問ができません。
さて、今日の質問に戻りますが、
「日本語を勉強をします。」は、どうして非文なのでしょうか。
これは「一文の中で、同じ意味を持つ助詞は一つしか使えない。」からです。
例1、(×)セーター①を洗濯②をします。
例2、(×)太郎さん①が花子さん②がゲームをしています。
例3、(×)今日は東京①に浅草②に行きます。
例1の二つの「を」、
例2の二つの「が」、
例3の二つの「に」
は、同じ意味なので、同一文の中で二つ連続しては使えないのです。
これに対し、助詞の意味が異なれば、
同じ発音の助詞が二つ表れても、使うことができます。
例4、(〇)キムさんは太郎さん①が将棋②が好きなのを知っている。
例5、(〇)クリスマス①に私の家②に来てください。
例6、(〇)浅草①に、先生②に会い③に来ました。
例6になると、
文としてはかなりへたくそですが、非文とまではいきません。
例4、例5、例6で、同じ発音の助詞が二つ以上使えているのは、
発音は同じでも、意味が違うからです。
つまり、
例4の「①が」は「主体」、「②が」は「対象」、
例5の「①に」は「時」、「②に」は「場所」、
例6の「①に」は「場所」、
「②に」は「動作の向かう相手」
「③に」は「動作の目的」をそれぞれ表しているからです。
では、次の文は非文ですか。それとも、OKですか。
例7、朝10時①から一番の人②から面接します。
例7も、あまりいい文とは言えませんが、非文ではありません。
でも、この「①から」と「②から」は同じ意味では?
と、お思いになった方もいると思います。
これらは、同じ起点を表してはいるのですが、
「①から」は「時間の起点」を
「②から」は「順序の起点」を表しているので、
一緒に使えます。
今回の質問文
「日本語①を勉強②をします。」
が非文な理由は「①を」「②を」が
「対象」という同じ意味を表すからです。
する動詞「勉強します」について
「勉強します」は例2、例3の形で使います。
例1、(×)日本語を勉強をします。
例2、(〇)日本語を勉強します。
例3、(〇)日本語の勉強をします。
「勉強します」は、どうして、
「勉強します」と「勉強をします」の
二つの形が可能なのでしょうか。
まず、「勉強」は名詞です。
「辞書」のような名詞に比べると
「勉強」は「動作性」を強く感じます。
そこで、こうした名詞を「動作名詞」と呼んだりします。
「動作名詞」は動詞「する」と結びついて、
「~する動詞」になれるのです。
例えば、
「掃除する」、「洗濯する」、「見学する」・・・などです。
こうした「勉強する」といった「~する動詞」は
「~する」の対象を「を」で示すこともできますから、
「勉強をする」とも言えます。
では、
例2、(〇)日本語を勉強します。
例3、(〇)日本語の勉強をします。
の違いは何でしょうか。
例2は「勉強する」の対象が「日本語」ということ。
例3は「勉強する」の内容が「日本語」ということになります。
しかしながら、
(×)日本語を勉強をします。
の非文の理由として、
日本語は同じ意味の助詞を二つ使うことはできません。
そこで、
例2、「日本語を勉強します。」か
例3、「日本語の勉強をします」の形にします。
と説明した時、
これで納得してくれたら、いいのですが・・・。
やはり、例2と例3の意味の違いも問われることが予想されます。
上記のように
例2は「勉強する」の対象が「日本語」ということ。
例3は「勉強する」の内容が「日本語」ということ。
という説明では、初級の場合わかってはもらえないでしょう。
例えば、こんな説明はどうでしょうか。
T:何を勉強しますか?
S:日本語を勉強します。
T:日本語の勉強は何と何と何?
S:漢字とひらがなとカタカナと・・・いろいろです。
T:日本語の何の勉強をしますか?
S:漢字の勉強をします。
これは単なる参考例です。
もっと、いいアイデアがあるはずです。
それを考えるための、ヒントになれば幸いです。
ではではニゴでした。